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なあ、佳澄。
ここまで話したらもう、僕が何を言いたいのかわるだろ?
確かに、ショックだったと思うよ。ずっと娘だと思って育ててきた子が、実は男の子だったんだから。
自分は男で、本当は女の子が好きなんだって言ってきたんだから。でもさ。
それは、病気なんかじゃない。
真澄のその心は、治療するようなものじゃない、大切な大切なあの子の一部だ。個性だ。
僕達は親として、それを尊重する義務があると思うよ。
同時に悔いなければいけない。
僕や佳澄、お祖父ちゃんやお祖母ちゃんが言ってきた何気ない言葉があの子を傷つけてきたこと。
スカートを履きなさい、女の子らしくしなさい、おしとやかに、結婚楽しみにしてる、孫の顔を見せて――その他もろもろ。あの子は二十年もそれを隠して、傷つきながら我慢して生きて来たんだ。僕達がそうさせてしまっていたんだよ。
そろそろ、その苦しみから解放して、自由にさせてあげてもいい頃じゃないか。
あの子を救って、僕の初恋の罪がなくなるわけじゃないのはわかってる。それでも願わずにはいられないんだ。
だってそうだろう。
男の子でも女の子でもそれ以外でも。真澄が僕達の可愛い子供であることに変わりはないんだから。
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