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温泉町、と町の人間達だけが豪語するようなひっそりと目立たない土地で、明治から脈々と、そして細々と受け継がれている貧乏旅館。それが白桜旅館だ。
それほど遠くない所には、ある一定数の観光客が訪れる名所もちらほらあり、まるで業種を間違えているわけでもない。働き者で朗らかな経営者一家に、ほんの少数ではあるが良く気の利く従業員。何より山紫水明の絶景を眺める事のできる自慢の大きな露天風呂があり、なかなかの優良旅館であると町の人も感じている。
がしかし、何より立地が悪かった。
電車は1時間に1本しか通らず、また駅から遠い。中心街から車で行こうにも、途中の目印などかま無く、紹介が難しい。バス停も中途半端な距離にあるため、宿泊者の不安を煽る。
要するに交通機関の不足。観光客を相手にする職種には致命的であると言って良い。
今までなんとか旅館が存続してきたのは、自慢の露天風呂を大衆浴場として町の人達に開放していたからであった。しかし、それさえも昨今の不況の煽りを受け来客が遠のく現実がある。
白桜旅館だけではない。中心街に出稼ぎに出て戻らない若者、また中心街で職を失い行き場を無くし帰ってくるもの…
町が
死にかけていた
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