トイレの神様

神様　私はトイレの神様です。
　　　さぁ、今すぐトイレ掃除をしなさい。美人になれます。
女子　いや、どういう理屈？
神様　…私、綺麗？
女子　えっ…まぁ…はい。綺麗だと思いますけど…。
神様　じゃあ、今すぐトイレ掃除をしなさい。
　　　トイレ掃除をすると、私のように美人になれます。
女子　なに、その雑な理論！霊感商法？それとも都市伝説？
神様　私、綺麗ですから！
女子　トイレの神様のメンタル強すぎか？
　　　ステンレス並みに傷ひとつなくピカピカなの？
神様　だって、毎日掃除したら、べっぴんさんになれるってお婆ちゃんが。
女子　あんたのお婆ちゃんが、そう言ったの？
神様　いえ、あの、知らないお婆ちゃんですけど…。
女子　あー、お婆ちゃんの知恵袋的なやつ？
神様　いえ、あの、たぶん迷信とか、そっち系？
女子　胡散臭い！
神様　ひどい！今は水洗トイレが主流ですし、
　　　汲み取り式の時代に比べたら、劇的にましになったんですよ！
女子　そういう臭さじゃなくて！
　　　…てか、神様のくせに臭かったんかい！
神様　それはともかく、トイレ掃除ですよ！
　　　ほら、あなたも、私みたいに美人になりたいでしょ？ねっ？
女子　いや、別に、そういうの求めてないんで。
神様　えー、失礼だけど…その顔で？
女子　ほんとに失礼な神様だなぁ、おい！
　　　っていうか、静かにして！仕事に集中できないじゃない！

（ノックの音のあと扉があき、トイレの個室に女生徒が入ってくる）

女子　いらっしゃいませ！花子です！
　　　トイレの花子さんって呼ばれてます。
神様　（割り込んで）お嬢さん、トイレ掃除しませんか？
　　　今なら特別サービスでべっぴんさんになれます！
女子　ちょっと、私の仕事の邪魔しないでよ！
　　　お客さん、困ってるじゃないの。
神様　別の個室でやればいいでしょ。
女子　私の仕事場は3番目の個室って昔から決まってるの！
　　　あんたこそ、出て行きなさいよ！

（女生徒がスプレーを2人に向かって噴射する）

女子　あっはっはっは！
　　　そんな消臭スプレーごときで、私をお祓いできるとでも？
神様　そうですよ、いくら消臭スプレーを振りかけたところで、
　　　根本的なトイレ掃除の問題は解決できませんよ！
女子　…あ、違う、このフローラルの香りは…
　　　消臭スプレーじゃなくて、主にわきの下に使用される制汗剤スプレー！
　　　え？私臭い？やだ、傷つくんですけど！
　　　もう恥ずかしくて人前に出れない！
神様　もう水洗トイレだから、大丈夫ですよね？
　　　ねぇ大丈夫だって言って！

（水洗トイレを流す音）