プレゼント

2/3
前へ
/3ページ
次へ
------------------ 「そろそろかな」 壁にかけられた古い振り子時計が午前0時を指す頃、男は湯呑みの中のぬるくなった白湯をグイッと一飲みすると、立ち上がった。 寒いし眠いが仕方ない。 男には、これからやらねばならぬことがあるのだ。 男の仕事は、皆が寝静まってからやることになっている。 そうしないといけないのは何故か…。 男は、その理由を知らない。 昼間ではいけない理由があるのかもしれないが、男は聞かされたことはなかった。 先代からも、子供が寝静まった夜やるものだと教わり、疑問も持たずにやってきたので、そういうものだと思うことにしている。 そんな重労働を、この歳になっても引退せずに続けている理由はたった一つ。 男を待ってくれている人がいるから。 しかも明日は終業式。学校に行く前の子供たちを笑顔にさせなければならない。 その責任がこの男に重くのしかかっている。 老体に鞭打って行かねばならない。男を奮い立たせるのは、その使命感だけだ。 男はのっそりと立ち上がると、厚手のファーの付いたコートを羽織り、帽子とブーツを身につけると、外に出た。 「よう相棒。今夜もよろしくな」 外に出た男はそう呟きながら、操縦席に腰を下ろし、ゆっくりと前に進めた。 シャンシャンシャンシャン…。 という軽快な音と共に。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加