壊れていく日常

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side 吉積 奏汰 「あー、倒れちゃいましたか」 大和が風紀委員室に向かったその後に、そう言ってこちらに来たのはこの学校の養護教諭だ。 一見柔らかい雰囲気だが意外と厳しい人だ。 「うん、貧血と睡眠不足だね。とりあえず齋木くんの部屋に運ぼうか。吉積くん、運べる?」 「もちろんです。」 「うん、じゃあ任せたよ。とりあえず明日は絶対安静ね。生徒会顧問には言っとくから。」 最後少し悪寒を感じた。 養護教諭と生徒会顧問は同期で、生徒会長、副会長をやっていたらしい。 この後たぶん顧問は叱られるんだろうな。 まぁ放っておいた罰だ。 抱き上げた葵は思っていたより軽かった。 身長170cmを超えるというのに何故か自分の腕の中に収まる。 よっぽど華奢なのだろう。 それに加えパッと見以前より痩せたように思える。 俺は余計葵のことが心配になった。 風紀だから、と今まで生徒会のことに手を出さなかったことを今更後悔した。 マスターキーを寮長に借り、葵の部屋に入った。 部屋は片付いており、少し真面目な普通の男子高校生の部屋だ。 勝手に入るのは悪いが、奥の寝室に運び、ベッドに葵を寝かせた。 眠っている葵は幼い子供のように見える。 いつからだろう、この後輩を庇護下に置きたいと思ったのは。 あぁ、目の下が真っ黒になっている。 俺はそっと葵の目の下を指で撫でた。 とりあえず葵が起きた時に食べれそうなものを作っておこう。 俺はキッチンに向かった。
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