149人が本棚に入れています
本棚に追加
――――――中学三年生、1月
僕は英華学園の高等部の編入試験を受けに来た。
英華学園は幼稚舎、小等部、中等部、高等部とある私立の男子校だ。
特に高等部は人里離れた山奥にあり、全寮制となっている。
この学校に集まるのは各界でも名を馳せる家の子息たちである。
僕は名家の次男だけど、家の方針によって中学校までは公立の学校に通い、高校からは英華学園に通うようになっていた。
僕は無事編入試験を終えたのだが、1人で帰る前にトイレに行ったら、迷子になってしまった。
この学校広すぎるんだよね。
編入試験の都合で、学校が休みなのか本当に人がいない。
どうしたらいいんだろう………
そんなときにあの人は現れた。
「君、どうした。」
誰かに肩を叩かれた。
振り返ると目を見張るような美太夫がそこにいた。
白の学ランの似合う、どこか色香を感じさせる黒髪黒眼のイケメンだった。
こんなに綺麗でかっこいい人を見るのは初めてだった。
僕は今まで恋をしたことがない。
けどわかる。
多分僕は今一目惚れしてしまった。
「………じょうぶ?………大丈夫?」
「あ…!えっと、あの、すみません、編入試験受けたんですけど、迷子になってしまって……」
ぼーっとして返事が遅れてしまった。
「あー、中学生の子か。この学校広いよね。いいよ、校門まで送るよ。」
優しいことに送ってくれるらしい。
僕はありがたさと申し訳なさでいっぱいになった。
そこからは2人並んで、この学校のこととか、公立の学校を知らない先輩に僕の学校のことを教えたりして校門まで向かった。
話しているうちにますます先輩のことが好きになった。
校門で別れる時、僕は思わず口走ってしまった。
「あの……!好みのタイプの人を教えてください…!」
先輩はびっくりしていたが、どこか試すように目を細めて、僕に言った。
「うーん……慣れてそうな子。
じゃあ、気をつけて帰るんだよ。」
そこで先輩と別れた。
最初のコメントを投稿しよう!