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第3章 九条琢磨 18
「ほらほら白状しろ~お前、ついに朱莉さんを吹っ切れて好きな女が出来たんだろう?」
二階堂はわざわざ弁当を持って琢磨のデスクに移動すると、オフィスに置いてある椅子を持ってきてドカリと座った。
「な、何なんですかっ!俺は今忙しいって言ってるでしょうっ?!」
琢磨は二階堂から離れると言った。
「まあ、そう言うなって…で、どんな物件を探してるんだ?」
「あーっ!ちょ、ちょっと!勝手に見ないで下さいよっ!」
琢磨の制止も聞かず、二階堂は琢磨の見ているPC画面をのぞき込んだ。
「ふ~ん…どれどれ…うん?何だ?部屋の間取り…随分多い部屋を見ているんだな?1人暮らしならこんなに2つも3つもいらないだろ?あ、それとも…一緒に住むつもりか?」
「何言ってるんですか。俺はあのタワマンは出ないと言っているでしょう?」
琢磨はもう観念して答えた。
「フム…そうだな。それにあのタワマンなら後1人位増えたって、一緒に暮らす分はどうって事は無いし…あ!もしかしてお前…!」
「な、何ですかっ?!」
「ひょっとして…子持ちの女にでも引っかかったか?!ほら!以前俺と静香の結婚式でお前がお持ち帰りされてしまったあの夜みたいに…」
「もう!いい加減にして下さいっ!あの話は思い出したくも無いですっ!とにかく…そんなんじゃないですからっ!」
琢磨は危うく子供が出来たと言われて騙されそうになった過去を思い出し、身震いした。
「そんなんじゃないって…それじゃ一体何だよ?」
二階堂は不思議そうな顔をして琢磨を見た。
「さっき掃除に来ていた女性…彼女の為にマンションを借りてあげようと思ったんですよ」
「は?お、お前…何言ってるんだ?今日あったばかりの女性に…。それにあの子はどう見ても女子大生くらいにしか見えなかったぞ?」
「女子大生じゃありません。彼女は去年大学を卒業していますよ」
「ふ~ん…それじゃ最低でも23歳にはなってるって事か…あ、いやいや!その彼女の為に借りるって言うのか?ひょっとして我がまま女だったのか?部屋が沢山無いと嫌だとか注文を付けて来たのか?」
「そうじゃないですよ!少し落ち着いて下さい。実は今4歳の子供がいるんですよ。」
「はあっ?!何だ、それはっ!それじゃ…女子大生の時に子供を産んだのか?!未婚の母なのかっ?!」
「違いますよ。その子は亡くなったお姉さんの子供だそうです。お姉さんは酷いDVにあって離婚していたんで3人で暮らしていたんですよ。そのうちにお姉さんはガンになって亡くなったそうですよ」
琢磨がそこまで言うと、神妙な顔つきで二階堂が見つめている。
「九条…お前、随分と詳しいな?最初から話を聞かせてもらおうか?」
琢磨は溜息をつくと、ついに観念して全てを白状することになった。
二階堂の娘の栞の幼稚園の運動会で、偶然強面の男に子供を渡すように迫られていたところを偶然通りかかった自分が助けた事、そして今朝清掃員として再会した後に、子供の父親が幼稚園に現れたので、2人で一緒に幼稚園へ行ったこと…。
二階堂は呆れた顔を押して琢磨の話を聞いていた。
「お、お前…それじゃ、男の子を守るために…その…舞と言う女性ともうすぐ結婚するって嘘をついてしまったのかっ?!」
「はい。それで父親に住所を知られているそうなので新しい新居を探してあげようとしていたんです」
「お、お前…何故そんな事を…?」
「舞さんの…」
「え?」
「舞さんの育てている子供が…『レン』と言う名前の男の子だったからです…」
二階堂の問いかけに琢磨は少し寂し気に笑みを浮かべると言った―。
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