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第4章 大企業の御曹司 2
同じ日の夜―
1LDKのタワーマンションの一室で各務蓮は自宅に持ち帰って来た仕事をしていた。
その時―
ピンポーン
ピンポーン
ピンポーン
立て続けに乱暴に部屋のインターホンが鳴らされた。
「え…?誰だろう?随分乱暴な鳴らし方だな…」
蓮は椅子から立ち上がり、壁に備え付けてあるモニターを見た。
「え?まどか?」
そこに立っていたのは今年20歳になったばかりの蓮の妹、まどかだった。
「まどか、どうしたんだい?突然訪ねて来るなんて」
インターホンに応じると、まどかはイライラした様子で言った。
『いいから早く入り口を開けてよっ!』
「わ。分かったよ。ちょっと待って」
蓮はすぐにドアを開けると、画面からまどかの姿が消えた。
(どうしたんだろう?まどか…あんなにイライラして…)
首をひねりながらも蓮は玄関で妹がやって来るのを待っていた。
数分後―
ピンポーン
再びインターホンが鳴らされたので蓮は玄関を開けた。
「まどか、一体何が…」
しかし、蓮の言葉に耳を貸さずにまどかは玄関から乱暴に上がり込むと、ソファにドサリと座った。
女子大生のまどかは相変わらず派手な服を着ている。胸元が大きく空いたフレンチスリーブのブラウスに、太ももまでの丈のフリルパンツを履いている。
その姿を見て蓮は溜息をついた。
「前から言っているだろう?そんな派手な服を着て大学へ行くのはやめろって…」
するとまどかは目をキラキラさせながら言う。
「どう?ドキドキする?」
「別にしないよ。まどかは僕の妹なんだから…。全くまどかは全然母さんに性格が似ていないな」
「何よ、お兄ちゃんはお母さんみたいに物静かな女性が好みなの?」
ジロリと恨めしそうにまどかは蓮を睨み付けた。しかし、蓮はそれに答えずに言った。
「まどか、父さんや母さんには話しているのかい?このマンションへ来たって事」
「もちろんよっ!だからここへ来たんでしょう?!」
「え?一体それってどういう意味なんだい?」
蓮はまどかの向かい側のソファに座ると尋ねた。
「お兄ちゃん!お見合いするって本当っ?!あの『ラージウェアハウス』の社長令嬢と…!」
「そうだよ。父さんと母さんから聞いたの?」
「そうよ!学校から帰ってきたらいきなりお父さんとお母さんが言ってきたのよ。それですぐにお兄ちゃんのマンションへ来たのよっ!」
まどかは先ほどから興奮しっぱなしだ。
「うん、そうなんだ。二階堂社長と父さんは昔から顔見知りだったし、今回の話は二階堂社長から持ち掛けてきたんだよ。社長は僕がまだ生後間もないころから知ってるから娘の相手には最適だろうって…」
「な、な、何が最適よっ!酷いじゃないっ!お兄ちゃんは私と結婚してくれるんじゃなかったの?!子供の頃から言ってくれたじゃない!大きくなったら私と結婚してあげるって…!」
「え…ええっ?!」
蓮はまどかのあまりにも唐突な話に驚いてしまった。
「だから昔からお兄ちゃんが付き合ってきた相手にありとあらゆる妨害をして破局させてきたのに…!」
「え?!そ、それじゃ…いつも僕が突然フラレてきたのは…まどかの仕業だったのかいっ?!」
「そうよ!だって…お兄ちゃんは私の物なのに!」
まどかはまるで駄々っ子のように首を振る。
「まどか…前から言ってるだろう?僕とまどかは兄妹なんだから結婚なんて無理だって。大体僕はまどかを今迄妹としてしか見てきたことは無いって事も伝えてあるよね?」
実は蓮が1人暮らしをしているのも、まどかが原因であった。
「何でよ?戸籍上は兄妹かもしれないけど、お兄ちゃんは翔おじさんの子供じゃないの!」
「まどか…」
(全く…どうして父さんも母さんもお見合いの話をまどかにしてしまうのだろう…?)
蓮は溜息をつくのだった―。
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