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第4章 大企業の御曹司 3
「とにかく、もう遅いから今夜はここに泊って行ってもいいけど明日はちゃんと家に帰るんだよ?父さんと母さんが心配するから」
「分かったわよ」
まどかは口をとがらせながらクッションを抱えた。
「そういえば、まどか。夜ご飯は食べたのかい?」
「ううん、まだよ。だって帰ったら早々にお父さんとお母さんからお兄ちゃんのお見合いの話聞かされるんだもの」
「そうなのかい?でももう20時だっていうのになんで食事をしていなかったんだ?それじゃ何か用意するから待っておいで」
蓮は対面式のキッチンに向かい、エプロンをしめると冷蔵庫を開けて、食材を取り出し、ガス台へ向かった。
「本当?やったー!お兄ちゃんの料理はおいしいからね。あ、もちろんお母さんもおいしいけど」
「まどか、なんで夜ご飯まだだったんだ?」
料理をしながら蓮は尋ねた。
「今日はね、突然シフトが変わってバイトの時間が変更になっちゃったのよ」
まどかは大企業の社長令嬢でありながら、ゲームセンターでアルバイトをしているのだ。バイト仲間にはもちろんそのことは秘密にしてある。
「そうか、偉いな。バイトして…でも勉強も頑張るんだぞ?」
「うん。だけどお兄ちゃんも学生時代ずっとファミレスでアルバイトしてたじゃない?」
「まあね。父さんから社会勉強の為に自分でバイトを探して働くように言われたからね。でもそのおかげで料理の腕が鍛えられたよ」
料理を続けながら蓮は言う。
「そうだよ…これだよ…」
まどかが蓮に向って言う。
「何が?」
「お兄ちゃんが格好良すぎるのいけないんだよ!顔もよし、性格も頭もよし!おまけに背は高くて女性に優しく、料理も得意。だから私はその辺の男の子たちじゃものたりないんだよ!今まで男の子と付き合っても3か月持った事ないんだからね?!やっぱり責任取って結婚してよ!」
「無茶言うなよ…まどか…」
蓮はため息をつく。
「だったら、一生誰とも結婚しないで独身でいてよ!そしたら許してあげる!」
「…結婚…。う~ん…そればかりは相手次第だからな…」
真面目な蓮は真剣に考えながら答える。別に蓮は今すぐ誰かと結婚をしたいわけではないが、何年たっても仲睦まじい両親を見ていると、自分もああいう夫婦関係になれればと憧れはあった。
「はい、出来たよ」
蓮は対面式のキッチンから腕を伸ばし、向こう側にあるカウンターテーブルの上に料理の乗った皿をトンと置いた。
「嘘っ?!もう出来たのっ?!」
ソファから降りてきたまどかはテーブルの上に乗っている料理を見て歓声を上げた。
「やったー!カルボナーラじゃないの!私が大好きなっ!いただきまーすっ!」
まどかはさっそくフォークで器用にパスタを巻き付けると口に運んだ。
「う~ん…最高!やっぱりお兄ちゃんのパスタは世界一だよっ!」
「おおげさだな、まどかは」
蓮はフッと笑うと、後片付けを始めた―。
****
23時―
蓮は電話で父、修也と話をしていた。
「うん、まどかはもう部屋で寝てるよ。今夜のバイトはなかなか大変だったみたいで…。もちろん大学には行くように言ってあるよ。…え?着替え?それならちゃっかりしてるよね。僕の部屋に何着かおいてあるんだからさ。…うん、見合いの話だよね?…分かってる。大丈夫だよ。断るつもりはないからさ。…最も相手から断られなければの話だけどね…。え?僕なら大丈夫だって?アハハハ…父さんは相変わらず親馬鹿だね。それじゃ…切るね」
ピッ
蓮は電話を切ると、氷の入ったウィスキーをマドラーでカランとならした―。
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