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第4章 大企業の御曹司 8 <完結>
「本当の兄妹じゃない…?一体どういう事なんだよ…」
するとまどかは涙を浮かべながら語りだした。
「私とお兄ちゃん…鳴海グループの人間なのに…各務って名字なの…変に思わない?」
「あ?ああ。言われてみればそうだな。だけど大企業ともなると一族の人間じゃなくて、どこからか優秀な人間をヘッドハントして社長に据えるのも別に珍しい話じゃないだろう?」
「お兄ちゃんはね…最初の名字は…鳴海だったんだよ」
「え…?」
「つまり、お兄ちゃんはお父さんとお母さんの子供じゃないんだよ」
まどかはハンカチで涙を抑えながら言う。
「ど、どういう事なんだよ…」
「お兄ちゃんのお父さんはね…鳴海翔って人なの。そしてお母さんは血のつながらない義理の妹の明日香って人なのよ。おじさんは私のお母さんと結婚していたのよ。だけど、おじいさまがおじさんの事気に入らなくて、離婚させてしまった挙句、次期社長になるはずだったおじさんを追い出してしまったのよ。そして変わりに社長になったのが私のお父さん…各務修也なんだよ。そしてお母さんは元鳴海翔の妻の朱莉。だからお兄ちゃんはね、お父さんのいとこの子供なの」
「ま、マジかよ…その話…。いや、でも…それを言ったら俺だって似たような境遇かもな」
「え…?どういう事なのよ…?」
いつのまにか、まどかの涙は止まっていた。代わりにその瞳には好奇心が宿っていた。
「俺も父親と血が繋がっていないからな」
「そうなのっ?!」
まどかは驚いて目を見開いた。
「ああ、それに…母親も違う。実の母親の妹が今の俺の母親なのさ」
「!」
「俺の父親は酷いDV男だったらしくて、母は離婚したらしいんだ。そして自分の妹と俺と一緒に3人で暮らしていたらしい。だけど、母親も癌で亡くなって、今の母が代わりに育ててくれたんだよ。そんな時に九条琢磨と知り合って結婚したのさ」
「そ、そんな…」」
まどかは呆然とした顔で話を聞いていた。
「それにしてもこんな偶然あるんだな?漢字こそ違うけど、同じ名前だし…実の両親では無いってところまでそっくりだ。挙句に…」
そこまで言うと、簾は肩を震わせて笑いながら言った。
「その各務蓮の妹が…恋する兄の見合いをぶち壊す為に見合い現場にやってくるんだから…。片や俺も好きな女の見合いが我慢できなくてやってきてしまったし…」
そしてまどかを見ると言った。
「俺たちの置かれている環境って…よく似ていると思わないか?」
「うん…そうだね…」
まどかはうなずき…そして笑った―。
****
「それじゃ…この見合いはお互合意の上、薦めてもいいってことですよね?」
栞が言う。
「え、ええ…そうですね。それにしても栞さんは本当にはっきりものを言う方ですね」
蓮の言葉に栞は首を傾げた。
「そうでしょうか…?こういうことはすぐにはっきりさせた方が良いかと思ったので。あ、ついでに先の話なのですが…私は結婚しても仕事辞めたくないんです。今面白くなってきたところなので…続けてもいいですよね?」
「もちろん構いませんよ?僕は家事仕事好きですから」
蓮はニコニコしながら言う。
「あ、でも子供が生まれたら仕事はやめます。子育ては自分の手でしたいので。後、それから…」
栞は次から次へと結婚後の話をする。すると、突然蓮は栞の右手をそっと握り締めた。
「え…?」
「結婚後の話もいいですけど…その前にまずはデートを重ねてお互いの事を知り合うのも大切だとは思いませんか?」
「ええ…そうですね…」
栞はうなずくと笑みを浮かべた―。
****
そして半年後―
栞と蓮は結婚し…その3年後、簾とまどかの結婚式が挙げられた。
2組のカップルは末永く幸せに暮らし…。
双方の企業はますます発展を遂げるのだった―。
<終>
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