世界と後悔

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「ユキくんとお出かけ! なんか嬉しいな〜」 「俺も、篤史くんとお出かけ楽しみ」  雪也は隣を弾むように歩く水森に歩幅を合わせて、面映い気持ちで公園を歩いていた。  この公園を抜けたら、商店街に出る。  あの家を離れて人の多い場所に出るのは抵抗があったが、水森の熱意に負けて雪也は今日電車に乗って隣町まで繰り出していた。  住宅街にある松永の家の近所には、小さな公園とスーパーマーケットがあるのみで、まだ年若い水森が雪也を連れて出掛けるには些か困難なロケーションであったためだ。  雪也はこの日のために松永に買い与えられたジャケットと服一式に身を包み、はじめてのお出かけに高揚していた。  電車にも初めて乗った。  他人と一緒に初めて外に出た。  ショッピングモールにも初めて行く。  今日は初めて尽くしで、雪也にとって忘れられない日になることだろう。  一人頬を緩めていると、水森が雪也の袖をくいと引いた。 「ユキくん、まずどこに行こうか? 服を見る? 食べ歩き? 映画とかカラオケとか行っちゃう? 今日は平日だし、どこもあんまり待たないで入れると思うんだよね!」  はしゃぐ水森に、雪也はおまかせ、と告げて後に続いた。  松永に持たされたお小遣いは、到底一日で使い切れるような額ではない。  松永にお土産を買おうと、雪也は水森のその背に提案した。 「ええ? ユキくん、社長のお土産なんて後だよ! まずは自分が楽しまなきゃ! ねっ」 「う、うん? そうなの、かな〜?」 「そうそう! そうと決まれば、まずは服を見よう!」  雪也ではなく水森の行きたい場所な気はしたが、雪也は微笑んで受け入れた。  はぐれぬようにと水森に差し出された手の温度が温かい。  平日といっても人通りの多い繁華街である。  雪也は身を隠すように体を縮めて水森の後に続いた。  水森の導きで次々と店を見回り、雪也は初めてウィンドウショッピングを経験した。  自分のためにお金を使うのも初めてで、ドキドキと心臓が高揚する。  反面、感じざるを得ない分不相応な気持ちを押し込めて、雪也は水森との時間を楽しんだ。
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