座敷童

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 今日も、今日とて雪也は父親の取引先の男に抱かれる。  雪也は18歳になっていた。  相変わらず先生の授業も続いている。  雪也の体が少年の域から出て、青年の領域に差し掛かると、先生はそれを活かすように方針を変えた。  可愛さよりも、美しさを。  あどけなさよりも、妖艶さを。  そして、誰よりも淫乱に。  それは功を奏して、取引先の男たちは、みな雪也に溺れていった。  取引先の男たちは、雪也に優しかった。  その境遇を察して、憐んでくれる人もいた。  その憐れみを、当の雪也は理解出来ない。  快感に素直になって、先生の教え通りに淫乱に誘惑することだけが、雪也の役目だったからだ。  それが雪也の生かされている理由だから。  そこに、感情は不要だった。  それに、従順にしていれば、男たちは雪也に酷い扱いをすることはない。  そうして、雪也は学んだ。  言うことを聞けば、生きていても良いのだと。  淫乱であれば、愛してもらえるのだと。  そうやって雪也は雪也の世界を生きていた。  だから、そこから更に世界が広がるなど、思ってもみなかった。 「だあれ?」  唐突に頭の上から声をかけられて、雪也は驚いてベッドから飛び上がった。  声の先は、天井と壁の境目。  おずおずと覗き込んで見えたのは、十かそこらの少女だった。  ふりふりのワンピースから細い手足が伸びている。  雪也の世界には、不似合いの少女だった。  雪也の部屋は牢屋のような場所だった。  ベッドとシャワー設備に、トイレ。その他には何もない。  半地下になっているこの部屋は、外に面した壁に通気口と灯り取りを兼ねた窓が一つだけついていた。  高い草木に遮られたそこは、大人の目線ではまず目に入らない。  そこにしゃがみ込んだ少女は、不思議そうに雪也を見下ろしていた。
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