座敷童

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「あ……、ぁう、あ……」 「まったく、お役御免だと思ってたんですけどね」  胡乱げな雪也の視線が、見慣れた空間を彷徨う。  まともに言葉を紡ぐことも出来ず、雪也はただ呼吸を繰り返した。 「ちゃんと復習してくださいよ。お前はもう、私の成果物として納品した後なんですか、ら……っ」  精を吐き出した先生の剛直が、ずるりと雪也の中から抜き取られる。  雪也は重力のままに床に落ちて、そのまま目を閉じた。  慣れ親しんだあの部屋に戻ってすぐ、雪也はそのまま床に押し倒された。  頬に冷気を感じる間もなく先生に服を剥かれる。  先生の補習は容赦なかった。  無理やりに体を開かれ、痛みと共に与えられる強烈な快感に、雪也は涙を流して理性を飛ばした。  何も考えていたくない。  あの時の真っ赤に染まった松永の姿が、脳裏に焼き付いて離れなかった。  頭から蒲団を被って、雪也はただ、自分の世界に閉じこもる。  彼は、逃げた葵は、松永に追いかけてきて欲しかったと言った。  理解できなかった。  雪也にとって、誰かが自分を追いかけてくるというのはたまらなく恐怖だったから。  捕まったら、連れ戻される。  あの生活に戻る。  そして、誰かに貰われて。  それは即ち、松永との生活が終わるということで。  雪也が生きる意味を失うことと同義だった。  でも結局。  雪也がここから出たから、松永は真っ赤になった。 「ごめんなさい、ごめ……なさい」  自分が不相応を選んだから。  あの日、大人しく誰かに貰われていたら、松永はあんなことにならなかったかもしれない。  たとえ誰かに貰われたとしても、松永の幸せだけを祈り続けていれば良かったのだ。  後悔しても遅い。  松永は、雪也のせいで不幸になった。  今はただ、この部屋で、松永の無事を祈るだけだ。
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