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「ユキくん、お尻痛いよー」
「ああ、ちょっと切れちゃったね。薬塗って暫く休養した方がいいから、社長に言っとくねー」
あれから、雪也は男優を卒業した。今は、松永の会社で雑用として働いている。
長い間セックスを生業としていた雪也は、ネコの男優たちから懐かれ、慕われているようだ。
スタッフに言いにくい体の不調なども雪也に相談する。
雪也はスタッフからも絶大な支持があるため、松永の会社で充実した日々を送っていた。
「雪也」
休憩時間にネコのタレントに勉強を教えて貰っていた雪也は、名前を呼ばれて元気よく立ち上がった。
仕事の合間にやってくる松永だ。
「今日は、七の段が言えるようになったよ」
「そうか、雪也は頑張り屋だな」
松永はそういって雪也を褒める。これも最近では見慣れた光景で、スタッフやタレントたちが温かい目で苦笑するのもお馴染だ。
「夜は、早く帰る」
「じゃあ、ここで待ってるね」
「ああ。誰にも浚われるんじゃないぞ」
「さらわれないよ! ……だって俺」
雪也は、松永の頬にキスを落とした。
「美冬だけの座敷童だもん!」
幸せを運ぶ座敷童は、恋人の前で幸せそうに微笑んだ。
<了>
これにて完結です。
お読みいただきありがとうございました。
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