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我が営業部のムードメーカーでもある吉野は、典型的なおしゃれ大好き!がそのまま仕事になったような男で、上司や後輩からの信頼も厚い。
調子の良いところもあるが、それがまた憎めない。
吉野の褒め上手は常に見習いたいなと感じているし
尊敬できる先輩の一人である。
新年会も盛り上がりを見せ、いつのまにやら抽選会が開催されていた。
プライベートな話ができるほど親しい人もおらず、元々こういった場は苦手だ。隣に座る先輩のお子さんの話になんとなく相槌を打ちながらその場をやり過ごしていた。
相変わらず愛想笑いをしながらお酒に口をつけていたところ、コツンっと頭に軽い衝撃がある。
その衝撃にぱっと視線をあげるのと同時に、神崎が栞の隣に腰を下ろした。
「いる?」
「え?」
そう言って目の前に差し出されたのは、ヨーロピアンなお洒落なパッケージに、ブルーのリボンがあしらわれた、小箱。
「当たった。ハンドクリームだって」
そう言って、神崎が抽選会が行われているあたりに一瞬視線を送った。
そして、はい。と手渡されてしまう。
「い、いいんですか?これ、良いやつですよ?」
「んー俺使わないし」
「…じゃあ、遠慮なく…これ、いい香りがするから大好きなんです」
「ふーん…どんな香り?」
嬉しそうにはにかんだ笑顔を見せる栞をじっと見つめる。
「ハーブの香りなんですけど、割と甘めで…」
「…分かんない。つけて」
今ですか?と苦笑しながらも、栞が小箱を開ける。
シルバーの可愛らしいパッケージのチューブが女の子の好きそうなデザインではある。
栞の白い指先が慣れた手つきでハンドクリームをくるくると塗っていくのをじっと物珍しそうに見つめた。
その神崎の様子にくすっと笑いが漏れる。
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