夢の途中

4/12
前へ
/168ページ
次へ
共同研究も無事まとまり、残すところ来週のプレゼン会のみとなった。いわば、3年間の集大成であり最終関門のようなもの。 「とりあえず、プレゼン終わったら企業説明会ラッシュかなぁ~」 「俺一応エントリーしたけど、研究室残るのもありかなぁとか思ってる」 「トモ、逃げんな~。翼は?外資だろ?」 「・・・・」 「…翼?」 「・・・・」 「つーばーさーきゅん!?」 「え?ぁ、何?」 相変わらず、夜9時の研究室。 プレゼン会の打ち合わせと称して、雑談が続く。 「何ぼーっとしてんの?就活だよ。」 「あぁ、僕は外資だからぼちぼち内定の時期」 「マジか~」 来年は大学最後の年。残りの単位を取得して、卒業研究をまとめて…としている間に、あっという間に卒業してしまうのだろう。 栞のシドニーへの異動がいつからなのか、時期的なことはわからないが、はっきりとしていること。 それは…もう時期に、栞が自分の傍からいなくなってしまうということ。 「外資の内定もらって?かわいい彼女と同棲して?お前の人生薔薇色だな!」 「は?どこにかわいい彼女いんの?」 「いるだろ!チャットん時『つばさ君?』てかわいい声聞こえてきただろ!あれが彼女じゃなきゃお前の趣味性癖を疑うわ!」 「・・・隼也がうるさい」 「この時間、隼也壊れるからね。ひがみひがみ。 てか、あの子マジで彼女違うの?」 「… …違うよ」 彼女になって欲しい人、ではあった。 今となっては、そんな望みも 叶わない。 綺麗事のようだが、栞が夢に向かって行くのであれば、それが栞の幸せなのであれば… 自分は喜んで、身を引くのだ。 ただ… ーーしおりさんがいなくなったら… また独りに戻っちゃうな… … そんな喪失感は…どうしても拭えない。
/168ページ

最初のコメントを投稿しよう!

167人が本棚に入れています
本棚に追加