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共同研究も無事まとまり、残すところ来週のプレゼン会のみとなった。いわば、3年間の集大成であり最終関門のようなもの。
「とりあえず、プレゼン終わったら企業説明会ラッシュかなぁ~」
「俺一応エントリーしたけど、研究室残るのもありかなぁとか思ってる」
「トモ、逃げんな~。翼は?外資だろ?」
「・・・・」
「…翼?」
「・・・・」
「つーばーさーきゅん!?」
「え?ぁ、何?」
相変わらず、夜9時の研究室。
プレゼン会の打ち合わせと称して、雑談が続く。
「何ぼーっとしてんの?就活だよ。」
「あぁ、僕は外資だからぼちぼち内定の時期」
「マジか~」
来年は大学最後の年。残りの単位を取得して、卒業研究をまとめて…としている間に、あっという間に卒業してしまうのだろう。
栞のシドニーへの異動がいつからなのか、時期的なことはわからないが、はっきりとしていること。
それは…もう時期に、栞が自分の傍からいなくなってしまうということ。
「外資の内定もらって?かわいい彼女と同棲して?お前の人生薔薇色だな!」
「は?どこにかわいい彼女いんの?」
「いるだろ!チャットん時『つばさ君?』てかわいい声聞こえてきただろ!あれが彼女じゃなきゃお前の趣味性癖を疑うわ!」
「・・・隼也がうるさい」
「この時間、隼也壊れるからね。ひがみひがみ。
てか、あの子マジで彼女違うの?」
「… …違うよ」
彼女になって欲しい人、ではあった。
今となっては、そんな望みも
叶わない。
綺麗事のようだが、栞が夢に向かって行くのであれば、それが栞の幸せなのであれば…
自分は喜んで、身を引くのだ。
ただ…
ーーしおりさんがいなくなったら…
また独りに戻っちゃうな… …
そんな喪失感は…どうしても拭えない。
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