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「忙しい時にごめんね?」
『ううん。どうしたの?電話とか珍しい』
「ん… …つばさ君の声、聞きたくなっちゃった」
課長にシドニー異動の正式な辞退を伝えた。
神崎に、この先神崎と一緒にいられないという、正直な気持ちを伝えた。
ひどく、緊張していたんだと思う。
1人になった途端…
翼に、会いたくなってしまった。
連日、翼がプレゼン会に向けて研究室に通っているのを知っている。
邪魔はしないように…
と思っていたが、今夜だけはどうしても…
ほんの少し
声だけでも…
翼に触れたかった。
『… …今どこ?』
少しの間を置いて、翼が口を開く。
「… …ひみつ」
『は?何で?』
「だって… …」
『・・・会いたいんだけど?』
翼のそんな一言に
翼のしっとりとしたその声に
胸が苦しくなって…
嬉しくて…
思わず笑顔が溢れてしまう。
「…勢いで、来ちゃったよ…学校」
『え!?学校って…ここ?』
「け、研究室の場所も知らないし、こんな夜に会えるなんて思ってないけど… …会えるかなぁて、思ったら…足が向いてた」
『近く、何ある?』
「えと…あ、噴水が見える。公園かなぁ?」
『オケ、行くから噴水で待ってて。動かないで』
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