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短くそう言うと、通話が切れてしまった。
S大に付属する公園なのだろう。
夜といえどイルミネーションで彩られた街路樹は明るく、人通りもちらほら。
噴水もネオンでライトアップされており、幻想的な雰囲気だ。
噴水に腰を下ろし、翼を待つ。
思いもよらず翼に会える。という期待に、胸がドキドキと早まる。
会ったら何を話そうか…
何から、話そうか… …
翼に伝えきれていないことは沢山あるのだ。
異動の話。
神崎の話 。
そして何より…
自分の気持ち… …
何から、何を、どう伝えようか・・・
「しおりさん!」
そんな事を悶々と考えていると、不意に
横方向から呼ばれた。
そのよく通る、柔らかい、アルトな声。
栞が一番傍で、聴き馴染んだ…
そして今、もっとも聴きたかった
その声… …
呼ばれた方角を振り向く。と、さらっとした金色の髪がライトで煌めき、やや心配そうな表情を見せ駆け足で近づいてくる翼に、笑顔を向けた。
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