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「びっくりしたぁ~…声が聞きたいなんて言うから、
泣いてんのかと思った」
安心した表情を見せる翼はいつも通りのキラキラとした笑顔で
この笑顔を見ると、ざわついていた心も不思議と落ち着いてしまうのだ。
「…結局、お邪魔しちゃったね?」
「いいよ。雑談してただけだし」
にこっと笑い、翼も栞の隣に腰を下ろす。
駆けつけてくれたのだろう。
わずかに息が上がっていた。
「雑談って、何の話をするの?」
「んー?就活とか?」
「3年生だもんね~ …つばさ君は?色々説明会行ってたじゃない?」
「僕は内定ももらってるから、あとはぼちぼち卒業に向けて…のんびりしてるよ」
「さすが。淡々としてるねぇ」
そう言って苦笑して見せる。
「そっか…つばさ君もあと一年で社会人かぁ」
「そうだよ。…だからいつまでも、しおりさんに甘えてらんないなぁって、思ってるとこ。じゃないと…しおりさんも安心して行けないでしょ…シドニー」
翼がにっとイタズラに笑って見せた。
翼は、優しいのだ。
栞が心置きなくシドニーに向かえるために、こうやって笑って見せる。
栞の自惚れでなければ
栞の勘違いでなければ…
翼も自分と同じで… …
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