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「…私ね、行かないよ?シドニー」
翼の綺麗な瞳を覗き、はっきりと言う。
色素の薄い瞳はキラッと煌めいて、吸い込まれそうなほどに澄んでいる。
「え… …?」
栞の発言にピンとこない様子で、翼が訝しむように首を傾げた。
「今日ね、正式に辞退してきた」
「…辞退って、何で? だって夢だったんでしょ!?」
「ん…そぅだね」
「…僕のせい?僕が足止めしちゃった!?ごめん、そんなつもりじゃなかったんだ!ただ、気持ちが抑えらんなかっただけで…しおりさんの足を引っ張りたいわけじゃない!」
栞を見つめる翼の瞳が、困惑の色を見せる。
栞が、翼の気持ちを優先するためにシドニー進出の夢を絶ったのだと…
「違うよ。…違うよ、つばさ君…
辞退したのは、ちゃんと私が決めたことなの」
「… …何で?」
それでも疑惑の念は拭えず、真っ直ぐに、栞を見つめた。
翼の瞳を正面から見つめ返す。
そして、はっきりと
翼に届くように…
言った。
「私が…つばさ君を、好きだから」
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