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壊れかけの心臓
すでに秋は終わりを告げ、肌を刺すような冬の寒さも、いつの間にやら日常のこととなってしまった。
… …分かっている。
今、起き上がらなければ…
今、抜け出さなければ …
ヤバイってこと。
「ん~…でもあと5分だけぇ~… …」
「ダメだよ!しおりさん!」
耳元でやや高めの、柔らかく澄んだ翼(つばさ)の声が響く。
その声から逃れる様に、ふかふかぬくぬくとしたお布団に潜り込んだ。
「・・・ぉ願いします・・・」
「…僕は構わないけど、困るのはしおりさんだよ!また慌てて準備すると忘れ物しちゃうよ~? 」
「・・・ん~・・・」
「・・・仕方ないなぁ…」
おそらく、駄々をこねる栞を呆れた顔で見下ろしているに違いない 。
ふぅとため息混じりにつぶやいたかと思うと、ふわりと布団が持ち上げられ、冷たい空気が流れ込む。
と、同時に…
モゾ… …
布団の中に何かが侵入してきたような…
「5分で起こせるように、僕の添い寝付きね?」
「っ!!??お、起きる!起きたっ!!」
ふわりと鼻先に香る翼の香水の香りから身を離す様に、慌てて布団から飛び出ると、すぐ真横で翼が愉快そうに笑っている。
せっかく添い寝するチャンスだったのに~などとイタズラに言いながら、栞のベッドから離れる翼は…
最近越してきた、"お隣さん"です。
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