疑惑と八つ当たり

5/12
前へ
/159ページ
次へ
段ボールが栞の視界から礼央を奪っていく様を はっきりと、思い出す。 「レ、レオ君っ!?レオ君!!」 頭の中が真っ白になる。 最悪な事態しか想像できなくて 心臓が張り裂けそうなほどに拍動し、指先が小刻みに震える。 ーーど、しよ…レオ君に何かあったら… 「…レオ君っ!!」 「…はぃはーぃ…」 と、崩れた段ボールの間から、声が聞こえた。 同時に段ボールが大きく揺れて、かき分けるように礼央が姿を現す。 慌てて礼央の傍へかけより、側の段ボールを端へやる。 バンバン!バンバン!! 「月雲!レオ!いるのかっ!?大丈夫か!?」 ドアを叩く音に、緒方の声が重なる。 「お、緒方さ…レオ君がっ…」 胸の前で手を組み、震える声で答える栞に 礼央か床に座った格好のまますっと手を伸ばす。 優しい指先が栞の頬に触れ… 「怪我、ないすか?」 礼央の問いかけに、頭を縦に振る。 礼央の穏やかな声にほっと胸を撫でおろすと、途端に涙が込み上げてきた。 「…ぁ、たしじゃなくて…レオ君が…」 涙で濡れる栞の瞳をじっと覗き 栞を…抱き寄せた。 「…かったぁ~…マジ、栞さんに何もなくて…」
/159ページ

最初のコメントを投稿しよう!

174人が本棚に入れています
本棚に追加