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「手の込んだことは何もできないけど…」
そう言って並べられた料理に礼央の瞳が輝く。
それはもう、あからさまに…
「す、げぇ…え?これ、本当に食べていいの?」
「どうぞ?たいしたもの作ってないけど…」
「ぜんっぜん!すげ、嬉しぃ!いただきます♪」
終始ご機嫌な礼央にくすっと笑いが漏れる。
たったこれだけのことに子供のように瞳を輝かせて…
ーー可愛い… …
昔からこういうのに…弱い。
このわんこのような、無邪気な感じ?
「うまい!すげぇ、栞さん天才!」
「そんな、大げさな…」
「大げさじゃなくてマジメに!… 彼氏にはいつも、作ってんすか?」
「えっ?…や…た、たまに?」
ーーて、すでに反射だなぁ…この見栄っ張り
「へぇ…いいなぁ…栞さんの彼氏」
そう言って苦笑して見せる礼央に、若干切ない気持ちになる。
自分を好きだなんて、きっと礼央の思い違いで…
「…こんなことじゃ、お詫びになんないけど」
「お詫び?」
「だって…私のせいでレオ君がゲガしちゃったんだし…」
「あぁ、そんなことないすよ。俺が勝手にしたことなんで…でも、栞さんが本当に悪いって思ってんなら… …」
先ほどよりも少し穏やかな声で礼央が言う。
その声に誘導されるように、礼央に視線を向けた。
その綺麗な瞳がじっと栞を捉えて…
目元にかかる前髪がさらっと揺れる。
いつもより少し…大人っぽい、熱っぽい
視線で…言った。
「お詫びに… …キスしてよ… …
… …なんて…言ってみたかっただけ… …」
礼央の切ない笑顔が
胸に刺さった。
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