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バレンタインスペシャルこぼれ話 2
バレンタインのこぼれ話です(以前書いたのを更新し忘れていました)
次のページに5月23日キスの日のSSを掲載しています。
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バレンタインスペシャル『甘い視線』で、駿がしらすのピザを買って戻ってきた時、江ノ島で管野と会ったと話していましたね。→https://estar.jp/novels/25931194/viewer?page=162
そのシーンをSSにしてみました。
月影寺から戻る菅野くんと、駿が江ノ島で偶然会った話です。
管野視点で、エッセイからの転載です。萌えが増すように加筆しています。
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少しクールダウンしたくて、月影寺から黙々と鎌倉駅まで歩いた。
今日は仕方がないよなぁ。
麻酔が切れた途端、あんなに痛がるなんて可哀想に。
鎌倉から江ノ電に乗って、江ノ島に。
夕日を眺めながら黄昏れていると、背後から声をかけられた。
「菅野? 菅野じゃないか」
「お! 青山!」
「どうした? 元気ないな」
「そういう青山は、今日は白石と一緒じゃないのか」
「想は風邪を引いてしまって……だから、家にいるよ」
「あぁ、そうか」
そういえば白石は昔から身体が弱くて、よく学校を休んでいた。
高1の時は、風邪をこじらせて肺炎になりかけて入院したと聞いている。
「だから俺だけ買い出しに来たんだ。ピザのテイクアウトに」
「しらすのか」
「想の大好物なんだ。食欲はあるみたいだから」
「よかった。大事にしてやらないとな」
「ありがとう。菅野も大事にしているか、あの子を」
「それがさ、大事にしすぎて……どこから手をつけたらいいか分からなくなってる……可愛すぎるって罪だな」
同性を恋人に持つ者同士だ。
つい、青山にぼやいてしまった。
「それ、分かるよ。だけど暴走だけはすんなよ……昔の俺みたいに」
「え……? どういう意味だ?」
「いや、なんでもない。まぁ……俺もかなり我慢した。なぁ、お前は俺の口癖、何だか知ってるか」
「さぁ?」
「それはだあ『シバラクオマチクダサイ』……だよ」
「ははっ、それって、もしかして……」
「そう! 寸止めの嵐さ」
「あー 俺もさっき味わった」
なんだか愉快な気分になった。
「俺たちはスポーツマンだ。菅野は高校時代はバレーボール、俺はサッカーを頑張っていたよな。だから正々堂々いこうぜ。チャンスは必ず巡ってくるさ」
「そうだな!」
「おっと想が待ってるから、そろそろ帰るよ」
「ありがとうな、元気が出だよ」
俺と別れた途端、青山が突然走り出した。
アイツ、やっぱ足が速いな!
よーしっ、俺も走ろう!
前方を走る青山を全速力で追い抜かした。
「お! 菅野もやるな」
「あぁ、俺の方が高校時代は早かった」
「高3では、俺のタイムの方が早かったぞ」
「よーし、じゃあ競争だ」
「おぉ!」
走って走って、走り抜けたら、身体に溜っていたモヤモヤは吹っ飛んでいった。
「ふぅ……なぁ菅野、俺もよく走ったよ。沸き上がる熱をどうにかしたくてさ」
「そうだったのか、確かにスッキリするな」
もしかしたら、青山自身も、今日は何かを持て余していたのかもしれない。
あ、そうか、白石が風邪気味だからか触れ合えないのか。
って、俺、何を想像して?
高校の同級生同士、どっちも昔から知っているので照れ臭いぞ。
「あのさ、菅野、料理やお菓子も……焦らずじっくり待つと美味しくなるよな」
「あぁ! 待つのって大事だな」
「待った分、美味しくなるさ」
「俺の場合は甘くなるかも」
あんこのような風太の笑顔が浮かんで、ポカポカになった。
虫歯が治ったら、かんのやの手伝いを、また一緒にしよう。
やっぱり、あんこと風太の組み合わせは最高だ!
ただし……今度は歯ブラシ持参でな!
「そうだ。白石の具合が良くなったら江ノ島デートなんてどうだ? えのしまの水族館でチョコレート色のアザラシが話題だそうだ」
「へぇ、想が喜ぶかも。じゃあその時は、かんのやにも寄るよ」
「週末は手伝っていることも多いから、会えるかもな」
楽しく明るい話題で別れた。
青山のお陰ですっきりしたし、楽しい気分になった。
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