バレンタインスペシャルこぼれ話 2

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バレンタインスペシャルこぼれ話 2

バレンタインのこぼれ話です(以前書いたのを更新し忘れていました) 次のページに5月23日キスの日のSSを掲載しています。 **** バレンタインスペシャル『甘い視線』で、駿がしらすのピザを買って戻ってきた時、江ノ島で管野と会ったと話していましたね。→https://estar.jp/novels/25931194/viewer?page=162 そのシーンをSSにしてみました。 月影寺から戻る菅野くんと、駿が江ノ島で偶然会った話です。 管野視点で、エッセイからの転載です。萌えが増すように加筆しています。 ****  少しクールダウンしたくて、月影寺から黙々と鎌倉駅まで歩いた。  今日は仕方がないよなぁ。  麻酔が切れた途端、あんなに痛がるなんて可哀想に。  鎌倉から江ノ電に乗って、江ノ島に。  夕日を眺めながら黄昏れていると、背後から声をかけられた。 「菅野? 菅野じゃないか」 「お! 青山!」 「どうした? 元気ないな」 「そういう青山は、今日は白石と一緒じゃないのか」 「想は風邪を引いてしまって……だから、家にいるよ」 「あぁ、そうか」  そういえば白石は昔から身体が弱くて、よく学校を休んでいた。  高1の時は、風邪をこじらせて肺炎になりかけて入院したと聞いている。 「だから俺だけ買い出しに来たんだ。ピザのテイクアウトに」 「しらすのか」 「想の大好物なんだ。食欲はあるみたいだから」 「よかった。大事にしてやらないとな」 「ありがとう。菅野も大事にしているか、あの子を」 「それがさ、大事にしすぎて……どこから手をつけたらいいか分からなくなってる……可愛すぎるって罪だな」  同性を恋人に持つ者同士だ。  つい、青山にぼやいてしまった。 「それ、分かるよ。だけど暴走だけはすんなよ……昔の俺みたいに」 「え……? どういう意味だ?」 「いや、なんでもない。まぁ……俺もかなり我慢した。なぁ、お前は俺の口癖、何だか知ってるか」 「さぁ?」 「それはだあ『シバラクオマチクダサイ』……だよ」 「ははっ、それって、もしかして……」 「そう! 寸止めの嵐さ」 「あー 俺もさっき味わった」  なんだか愉快な気分になった。 「俺たちはスポーツマンだ。菅野は高校時代はバレーボール、俺はサッカーを頑張っていたよな。だから正々堂々いこうぜ。チャンスは必ず巡ってくるさ」 「そうだな!」 「おっと想が待ってるから、そろそろ帰るよ」 「ありがとうな、元気が出だよ」  俺と別れた途端、青山が突然走り出した。  アイツ、やっぱ足が速いな!  よーしっ、俺も走ろう!  前方を走る青山を全速力で追い抜かした。 「お! 菅野もやるな」 「あぁ、俺の方が高校時代は早かった」 「高3では、俺のタイムの方が早かったぞ」 「よーし、じゃあ競争だ」 「おぉ!」  走って走って、走り抜けたら、身体に溜っていたモヤモヤは吹っ飛んでいった。 「ふぅ……なぁ菅野、俺もよく走ったよ。沸き上がる熱をどうにかしたくてさ」 「そうだったのか、確かにスッキリするな」  もしかしたら、青山自身も、今日は何かを持て余していたのかもしれない。  あ、そうか、白石が風邪気味だからか触れ合えないのか。  って、俺、何を想像して?  高校の同級生同士、どっちも昔から知っているので照れ臭いぞ。 「あのさ、菅野、料理やお菓子も……焦らずじっくり待つと美味しくなるよな」 「あぁ! 待つのって大事だな」 「待った分、美味しくなるさ」 「俺の場合は甘くなるかも」  あんこのような風太の笑顔が浮かんで、ポカポカになった。  虫歯が治ったら、かんのやの手伝いを、また一緒にしよう。  やっぱり、あんこと風太の組み合わせは最高だ!  ただし……今度は歯ブラシ持参でな! 「そうだ。白石の具合が良くなったら江ノ島デートなんてどうだ? えのしまの水族館でチョコレート色のアザラシが話題だそうだ」 「へぇ、想が喜ぶかも。じゃあその時は、かんのやにも寄るよ」 「週末は手伝っていることも多いから、会えるかもな」  楽しく明るい話題で別れた。  青山のお陰ですっきりしたし、楽しい気分になった。
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