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初恋 Sunshine 9
「風太、いつの間にビーチボールなんて持ってきたんだ?」
「あのですね、お休みの許可をいただくため、ご住職に管野くんと海に行くことを話したら、用意して下さったのですよ」
「へぇ、スイカじゃないんだな」
風太は小豆色のビーチボールを胸に抱えながら、首を傾げた。
「スイカ? スイカは果実的野菜であって、あこんではないですよ?」
「あ、もしかしてその小豆色って、あんこ色か」
「はい、もちろんそうですよ。特注品だそうです。住職さまはいつも僕とあんこちゃんに、とってもお優しいのです」
それは知っているが、まさかビーチボールまであんこ色にするとは、おそるべし風太のあんこ熱。
俺としては、夏の海といえば水着を持たせて欲しかったところだが。
「そうだ、副住職は何かくれなかったか?」
「もちろん、いただきましたよ!」
「何をだ?」
「えへへ、ちょっとお恥ずかしいのですが」
「おぉ! 何を持たせてくれたんだ? 見せてくれ!」
(もしかして水着か。恥ずかしいって……もしかして際どいヤツなのか。ヤバいな。俺、絶対に宗吾さん化してるよなー! あぁ、でもワクワクドキドキしてくる)
「えへへ、これですよ」
風太がごそごそカバンから出したのは、あんこ色のマントだった。三色団子の模様付きの!
「これは防水マントなんですよ。だからこれを着て海で遊びましょう」
「はぁ?」
レインコートってことか。拍子抜けだが最高に可愛い。
まぁよく考えたら俺だってまだろくに見たことのない風太の半裸、よそのヤツには見せたくないしな。
そこはかとなく流さんの気遣いを感じる!
「さぁ、休憩時間だ。遊びに行こう」
「あ、はい!」
風太は、羨望の眼差しを浮かべていた。
「どうした?」
「実は……こんな風に誰かと夏の海で遊んで見たかったんですよ。僕、いつもおいてけぼりだったので……あ、ごめんなさい。辛気くさかったですよね」
「そんなことない。今日は思いっきり遊ぼうぜ」
「はい! あの……」
風太が少し頬を染めて、俺の耳元で囁く。
「小坊主の衣装は、管野くんの前だけで脱ぎます。その時は手伝ってくださいますか」
「‼」
分かってるんだか、分かってないんだか、無邪気な顔をして!
****
「駿にも塗ってあげるよ」
「え! 俺はいいよ」
「……でも……日焼けし過ぎは良くないんだよ。だから任せて」
「……想、頼むから悪戯はするなよ」
「うん」
品行方正な想は悪戯などしたことないが、天然の悪戯なら山程してくれたよな。
きっと今日だって……
真剣な眼差しで何を言い出すことか。
「駿、僕、実は練習してきたんだ」
「何を?」
「マッサージしながら塗る方法」
「マッサージ?」
「うん! 試してみてもいい?」
「あ、あぁ」
想の手によって俯せにされ目を閉じると、優しい指先を感じた。日焼け止めクリームを塗った手が、背中から脇腹まで緩やかに滑り出す。
「しゅーん、いつも仕事を頑張っているから、身体が強張っているね」
「あぁ、気持ちいいよ」
「本当? 僕、頑張るね」
想が一生懸命慣れないことをしてくれるのが嬉しい。
それにしても、なんだか下腹部がムズムズしてくるな。
ヤバい、ヤバい。
「うっ……」
「ごめん。痛かった?」
「いや、ちょうどいいよ」
想に深い意図はないらしいので大人しくマッサージを受け続けるが、むくりむくりと大きくなる息子。
ヤバいって。このまま大きくなると起きられなくなるぞ。
あー でも気持ちいい!
そこで突然停止してしまった。
「どうした? 続きは?」
「ごめん、この先のやり方を忘れちゃって。ちょっと待ってね、スマホでもう一度検索するから、ええっとどれだったかな?」
律儀で真面目な想。
想のマッサージはまるで……
「白石、何してんの?」
「あ、管野と小森くん、もう遊べるの?」
「はい、遊びましょう!」
いい所で、邪魔者じゃなくて管野と小森くんの登場か。
いやいや待てよ、俺、今起き上がれない。
息子が勃ってる。
下半身は水着なのでバレバレだ。
「ちょっと待ってね。駿のマッサージもう少しなんだ」
「いやいやいや、これ以上は無理ぃー」
「ははっ、白石、何のマッサージ? 動画を観ながらするなんて」
「これだよ。このマッサージ方法を真似ているんだ」
「えぇぇ!」
管野の素っ頓狂な声が響き、続いて小森くんの不思議そうな声がした。
「せいかんマッサージって、なんでしょう?」
「精悍な体つきの男性用のマッサージのことだよ」
想がにっこりと上品に答える。
「あぁ、合点承知です。青山さんって凜々しいですものね」
「小森くんも管野にしてあげるといいよ」
「ほぅ! ぜひ教えてくださいませ」
せ、精悍マッサージ?
まさか……
性感じゃないよな?
あああ、イテテ……股間が痛い!
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