初恋 Sunshine 9

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初恋 Sunshine 9

「ふぅ、これでマッサージは終了だよ。僕、ちゃんと出来ていたかな?」  振り返ると、想は頬を桃色に上気させ、額に汗をうっすら浮かべていた。  ラッシュガードのファスナーを開けているので、昨日散々弄った乳首がチラチラと見える。  清楚なのに色っぽいんだよな、想ってさ。  なんて見惚れていると、甘い言葉が、耳に吹き込まれた。 「心を込めたんだ……駿を想う気持ちをたっぷりと」  ヤバいって! もう蕩けそうだ。 「想のせ・い・か・んマッサージ最高‼」  俯せのまま親指をあげて「グッジョブ」すると、想も満足そうに微笑んでくれた。 「本当? 頑張って練習した甲斐があったよ」  あぁぁ、もう精悍でも性感でも、どっちでもいい。  想が練習までして準備してくれたのが嬉しくて!  あの夏の苦い別れを思えば、こうやって肌に躊躇いもなく触れてもらえる関係になれたのは奇跡だ。想の抵抗をねじ伏せてまで奪おうとしたキスからの出発だから。  想と甘く囁き合っていると、管野と小森くんに声をかけられた。 「おーい、そこのお二人さん! ラブラブな所申し訳ないんだけど、俺たちの休憩時間は1時間しかないから、早く遊ぼうぜ!」    想がピクッと肩を揺らした。 『遊ぼう!』と言う言葉に、嬉しそうに反応しているんだな。 「駿、駿、ねぇ、早く行こうよ。ビーチボールなら僕にも出来そうだし」 「そうだな」  もちろん今すぐそうしたい所だが、この砂にめり込むものはどうしよう?  そろりと起き上がり、股間を確認するとしっかり勃っていた。    アイテテ……いやぁ想のマッサージって最強だな。  繊細に相手の気持ちを優先する想のマッサージ。  俺が感じる箇所を丁寧に辿り、優しく刺激してくれた。  この身体の反応は、想のマッサージが上手だった証拠さ!  俺の身体は立派に反応した! バンザイ!  と叫びたい所だが、ここは家族連れで賑わう由比ヶ浜の海だ。  こんなおっ立てた姿、誰かに見つかったらヘンタイになっちまう。  そこにまた小森くんがやってきて、小声で…… 「あのぅ、もしかしてまたお困りですか」 「……うう」  まさかここがなんて言えないし、前屈みになって必死に封じ込めようと目を閉じると、バサッと何かを肩に掛けられた。 「あのあの、これをお使い下さい」 「これは君の大事な物では?」  肩にかけられたあんこ色のレインコートは、特注品なのか三色団子の刺繍が施されていた。 「お困りの方のお役に立てて嬉しいです」 「じゃ……少しだけ貸してくれ」 「あんこは正義ですから、どうぞ」 「あ? あぁそうだ。あんこは正義だ!」  なんだか管野の恋人は浮世離れしているが、可愛い子だ。  ふわふわゆるりとしている所が、想と似ていて気が合いそうだ。    俺はレインコートに隠して、気を紛らわせ軽く腿をつねって平常心を心がけた。  ふぅ助かったよ。 「駿、さっきから何しているの?」 「ええっと、これを試着をさせてもらったんだ」 「それ、とても素敵なレインコートだもんね。試してみたくなるの分かるよ」 「だろう? よし! 小森くん、ありがとう。もう大丈夫だ」 「よかったです! それにしても、青山くんのむすこくん、やんちゃでしたねぇ」 「わぁ~‼」  慌てて口を封じようとしたが、管野と想に聞かれてしまった。     管野はうんうんと同情の眼差しを、想は目元を染めていた。 「よーし、風太、レインコートの準備OKか」 「かんのくーん、どうですか」 「最高にキュートだ!」 「想、ラッシュガードちゃんと着たな」 「うん」 「よし、じゃあ海に行こう! 海で遊ぼう!」  ****  海に行こう!  海で遊ぼう!  それは、幾度となく僕の前を通り過ぎていった言葉だ。  夏の海はキラキラ明るく眩しいのに、僕はいつも遠くから眺めていた。  マンションの部屋でコンコンと咳き込みながら、いつも硝子の向こうの世界を見つめていた。  目を凝らすとクラスメイトが真っ黒になって波打ち際でビーチボールをしていた。その中には駿もいた。駿は時折マンションを見上げて、手を振ってくれた。下からはよく見えないだろうに、僕が見ていると信じて、いつもブンブン手を振ってくれた。  駿の日焼けした健康的な肌、白い歯。  全部、目に焼き付いているよ。  それからね……駿が拾ってくれた桜貝、今でも持っている。 …… 「ここに想の願い事を込めておいて」 「え?」 「いつか俺が叶えてあげるから!」 「うん、ありがとう」 ……  あの桜貝には、いつか僕も皆と一緒に遊びたいという願いを託したんだよ。  ずっと憧れていた夢が、いよいよ今日叶うんだね。  子供の頃叶えられなかった夢は、大人になってから叶えてもいいんだね。 「想、行くぞ!」 「うん!」  あんこ色のビーチボールが、青空に飛び交った。 「白石、上手だな!」 「想くん、良い調子ですよぅ」 「風太くんも!」  皆で遊ぼう!  一緒に夏を満喫しよう!  憧れの夏にダイブしよう!                      『初恋 Sunshine』了 0d9ae403-584f-4e15-97f6-69c72d688bcf(auさんが、あつ森で作って下さった画像の再掲です) 6682e3ad-9fd2-47f4-a6b8-12042324f328 (ぬいはまるさんが作って下さったものです。衣装もすべて、いつもありがとうございます)                           ↑ 実はこの水着に見立てた衣装には、大笑いする物が混ざっています😁 お気づきですか。    管野×小森CPを巻き込んだ、初恋らしいピュアな夏休み、いかがでしたか。  今回は夏休みspecialなので、軽いタッチで書いてみました。  また季節のお話でお会いしましょうね。  読んで下さって、ありがとうございます!  
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