2023年特別番外編 Happy Halloween 駿&想Ver.

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2023年特別番外編 Happy Halloween 駿&想Ver.

「想、こっちこっち!」 「駿! ごめんね。遅くなって」 「大丈夫だよ。さぁ行こう!」 「本当に渋谷に行くの?」 「そうだよ」  会社帰りに駿から熱心に、渋谷でデートしようと誘われた。  でも今日は10月31日ハロウィン当日だよ?  ハロウィン当日ですごい人では?  僕には到底無理だ。  そんな派手な場所なんて、気後れしてしまうよ。  そう思うとどうしたって足取りが重くなってしまう。 「想、違うよ。俺たちが行くのは繁華街じゃない」 「じゃあ、どこに?」 「渋谷の外れにとっておきの写真館があるんだ」 「え? 写真を撮るの?」 「あのさ、ハロウィンの夜って魔法がかかっているような気がしないか。だからいつもなら行かない場所にも行ける気がしてさ」 「それは分かるよ。そういえば僕が小さな頃、夜の仮装行列に行けなくてがっかりしていると、おばけが遊びに来てくれたんだ。僕の分のお菓子を持って……あれも魔法みたいだったよ」 「どんなおばけだった?」 「すごくかっこ良かったよ。大好きだった」 「へへ」  駿が鼻の頭をかいて嬉しそうに笑った。  僕の家に、僕の分のお菓子を持って来てくれたのは、おばけの仮装をした駿だった。 「今はもっと好きだよ」 「想はストレートだよな」 「あ、変かな?」 「いや、最高に嬉しい。さぁ着いたぞ」  そこには『プリクラ専門店』と看板が掲げられていた。 「ここは仮装の予定はないけどハロウィンらしい写真を撮りたい思っている人向けのプリクラ専門施設で、中でコスプレ衣装の貸し出しくれるんだ。どうだ? ここなら想も頑張れそう?」  駿の気持ちが嬉しかった。  子供の頃に出来なかったことを、こうやって叶えてくれるんだね。 「うん、頑張りたい」 「よし、個室だしカメラマンもいないから気兼ねなく出来るんだ。予約してあるから行こう。どうしても想に着せたいコスチュームがあるんだ。着てくれるか」    それは『アラジンと魔法のランプ』のコスチュームだった。 「これ?」 「おっと、想はこっちな」 「どうして?」 「露出が少ない方がいい。想はお腹を出すと風邪を引くだろう」 「くすっ、過保護だね」 「どうとでも、想の艶めかしい裸は俺だけのものだ」 「はっ、恥ずかしいよ」  二人でスーツを脱いで、『アラジン』の衣装を着た。  まるで魔法にかかったような心地になった。 「どうしてこの衣装を?」 「エロいから」 「え!」 「それは嘘。あのさ……覚えているか、小学校の学芸会で『アラジン』をやったの」 「あ……僕が発作で入院していた時の演目だね」 「あの時、俺、主役のアラジンで……どうしても想に見て欲しかった。だから今更だけど……」 「今更なんかじゃないよ。今だから二人きりで写真を撮れるのだから」 52b77783-4609-4ecc-8900-45056f7ff620 「想……聞いてくれ。俺が想に色んな世界を見せてあげるよ。輝き瞬き広がる素晴らしい世界を――」 「うん、駿と一緒にどこまでも羽ばたくよ」 「全く新しい世界を、俺とどこまでも」  プリクラに写る僕たちの心は、まるで魔法の絨毯に乗っているように縦横無尽に夜空を駆け抜けていった。     家に帰ってプリクラの写真を二人で眺めていると、突然駿が雄叫びを上げた。 「ぎゃああああー」 「ど、どうしたの?」 「こ、これ! あああああ、せっかくの写真が台無しだ」 「ん?」  よく見ると、駿の衣装……  お腹に肌色が重なっているように見えるのは、何故だろう? 「これって……もしかして駿のパンツ?」 「うううう、せっかく決めたのに……なんで俺、今日らくだ色のパンツを選んだ?」 66b97daa-5795-4cb6-a818-9aa3d20c128a  そういえば珍しい色のパンツを持っているとは思ったが、聞いてはいけない気がして、箪笥にしまっておいた。 「駿、大丈夫だよ。僕はどんな駿でもかっこいいよ。それに僕は今、駿と一緒に新しい世界にいるんだ。信じられないような眺めで言葉にならないほどの幸せな日々を送っている。だからこれもまた思い出だよ。笑顔の思い出が出来たね」 「想は優しいな。俺の失敗を嬉しい思い出に変えてくれるなんて」 「失敗なんかじゃないよ。駿のすべてが好きだから、パンツの色など僕には……あっ……」  突然、ベッドに押し倒された。 「さっき見えなかった分、よく見せて」 「どこを?」 「想のすべてを」  上半身どころか、全部脱がされた。  だから僕は駿の肩に手をまわし、引き寄せた。 「HAPPY HALLOWEEN 駿、僕を夢の世界に連れて行って」  ハロウィンナイト  この先は大人の世界  僕たち、今だから出来ること。  さぁ、素晴らしい世界を駆け巡ろう。
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