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村への訪問
「…って、ラエンはいいけど、なんでユアク団長まで来るの? 」
「ぜひ一度一緒に行ってみたい、っておっしゃって…」
「ふーん。まあ、いいけど。今日は私は聖女さまじゃなくて、魔法が使える聖女のお手伝い、ってことだから、よろしくね」
「ではセリカ殿、私の馬に一緒に乗りましょう」
「あ、いいの。ユアク団長。私はいつも馬車で行くから」
「セリカ、今回は山道を入っていくから、馬車はちょっとキツイ。馬に乗っていったほうがいい」
「え…、でも私、馬に乗れないし…」
「ですから私の馬に乗りましょう」
ユアク団長が眩い笑顔で言う。
「いや、ちょっと、それは…」
「ほら、さっさと乗れよ」
ダーシがセリカをひょいと持ち上げて、ユアク団長の馬に乗せた。
「さあ、行きましょう」
ユアク団長の馬を先頭に出発した。
「…ダーシ、いいのか? 」
「何が」
ラエンが、ユアク団長を見ながら言うと、ダーシはそっけなく答えた。
「いや、別に」
「なんだよ」
「なんでもないよ」
セリカはユアク団長の前に座り、馬に揺られている。
馬に乗るのって苦手なんだよね。前の世界では、身近に馬なんかいなかったし。大きくてごつごつしてて、息遣いが荒くて…、ちょっと怖いな。
「馬が怖いですか」
ユアク団長の言葉に、セリカは驚いた。
「わかる? 」
「はい。わかります。あなたが怖がってるから、馬も怖がってますよ。大丈夫。この子を信じて、任せて乗っていてください」
そっか。こっちが警戒してれば相手も警戒するよね。特に動物は敏感だから。
魔獣もそうだったな。傷ついて、これ以上傷つけられたくなくて、怖がってた。
「この道ですね」
だんだんと道がでこぼこと荒れてきた。たしかに馬車ではつらい。自分も馬に乗れたほうがいろいろ便利だろうなとセリカは思った。
山合いに村が見えてきた。
「この村は隣国へ抜ける通り道にあるんです。村を抜け森を抜けると隣国ですよ」
「へえ~」
到着すると、村人が集まってきた。
「聖女様だ。聖女様がいらしてくれた」
「皆、こちらは聖女様ではなく、聖女様にお仕えする者だ。今日は聖女様のかわりにこちらへやってきた。名は…」
「あ、えっと…、セ、セイ、と言います」
「セイだ。よろしく頼む。誰か、怪我人たちのところへ案内してくれ」
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