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シュキからの情報
それから何度か、文書館へ行くと、シュキに会うことがあった。
顔を見合わせると、会釈したり挨拶を交わすようになり、次第に話もするようになっていった。
シュキは、司祭長のローイと同じく、司祭の血筋だそうだが、魔法は使えないと言っていた。
「親戚とは言ってもかなり遠いので、お互いに面識もありません。それにローイ様は正当な本家の血筋で、魔力も持ってらっしゃるし、私が気軽に声をかけることもできません」
「ふーん。そうなんだ」
「セリカさまは、勉強熱心ですね。特に魔獣にご興味が? 」
「あ、うん。シュキが言ってたように、私が前にいた世界では、魔獣なんていなかったし。魔獣って、いつから、どうして、いるのかなあ、って…」
「魔獣が生み出された魔法のことについては、ご存知ですか? 」
「うん。ティエザ様に教えてもらった。封印されてるんだってね」
「ええ、まあ、そういうことにはなっていますが、なにぶん神話レベルの大昔の話でして、実話かどうかも怪しいのです」
「へえ、そうなんだ」
「そうなのです。ですからその魔法については、聖女であるセリカさまがご心配することはありませんよ」
「えっと…、でも、封印された本は、代々の司祭長が管理してるって… 」
「ですから、それも、ただの言い伝えです。そんな危険な魔法があったら、誰かが必ず利用しようとするでしょう。そういったことは、これまでにありませ
んので、魔獣に関わる伝説のひとつと言えるのです」
「じゃあ、ただの伝説? 」
「私どもは、そのように聞いています」
「ふーん…」
「でも、司祭の本家には、門外不出の魔法が伝えられているとも言われていますし、もしかしたらその中に、あるのかもしれないですね」
どっちなのよ。と、セリカは思った。
「さっきは、ただの伝説だって言ったじゃん」
「史実をもとにした伝説だって、沢山あるでしょう」
「まあ、そうだけど…」
「ところで、なぜセリカさまは、そんなにその魔法に興味があるのですか? 」
「えっ。だって、それは…、面白そうじゃない」
「…」
セリカの答えに、シュキは沈黙した。
「ねえ、シュキはどう思う? 本当に、魔獣を作り出した魔法って、あると思う? 」
「さあ…、私には…」
「あるとしたら、どこにあるのかなあ。きっとローイ様だけが知ってるんだよね。どこかに隠してあるんだろうなあ」
シュキは苦笑した。
「おもしろいですね。セリカ様は…。そういえば、司祭の本家だけに伝わる祈祷所があるんですよ。そこは、司祭長とほんの数人しか入れなくて、家族でさえ選ばれた者だけが入れるところだそうです」
「わあ~、そこ、ものすごく怪しいね」
「あの…、セリカ様。仮にその魔法を封印した本があって、それを見つけ出したとして、どうなさるのですか? 」
「えっ、うーん、それは…」
セリカは考え込んだ。
「…そういえば、どうするかなんて、考えたことなかった。ただ、見つかったら面白いな、なんて、宝探しみたいな気持ちで…」
「面白い…? 」
シュキは、拍子抜けしたような顔をした。
「うん。なんかさ、ワクワクしない? 封印された魔法なんてさ」
「はあ、そうですか…」
シュキはなんだか呆れたようだった。
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