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厨房でも“セリカ”
「姉さん、いる? 」
「おう、シヴィル。ルヴァなら今、ちょっと買い出しに行ってるぞ」
シヴィルが厨房を覗くと、ガイオクが返事をした。
「セイ…、セリカなら、来てるぞ」
「えっ…」
ガイオクに言われて見てみると、厨房の隅にセリカが座ってこっちを見ていた。そばに若い男のシェフが立っている。
シヴィルがセリカのほうに行くと、入れ違いにそのシェフはセリカのそばを離れた。
「シヴィル、ルヴァさんは今、出かけてるって」
「うん。ガイオクさんに聞いた。セリカ、自分のこと、みんなに話したんだね」
「そうなんだよ~。ルヴァさんにも言っておいてって頼んでおいたよ」
「そっか。ところで、さっきのシェフの人は? 」
「ああ、ゼダね。最初に私が、厨房で仲良くなった人のひとりだよ。いつも親切に、いろいろ食べ物を出してくれるんだよ」
「へえ、そっか。ゼダね。あんな人いるなんて気づかなかったな」
「そお? このあいだ家に帰るとき、ゼダも食料をいろいろ用意してくれたんだよ」
「ああ、そうだったんだ」
「うん。シヴィルが気に入ってた瓶詰の木の実漬とかも、ゼダが届けてくれた…、んじゃなくて、作ってくれたんだよ」
「ああ、あれね。うん、美味しかったよ。そっか。…って、えっと、ゼダが届けてくれたの? 」
「ううん。間違えた。作ってくれたの」
「ふうん? そっか」
「うん。ところでシヴィルは? おやつ、もらいに来たの? 」
「まあ、そんなところ。姉さんに、ユアク団長たちに届けるものを頼んでおいたんだ」
「ユアク団長たち、帰ってきたの? 」
「いや。まだだよ」
「あ、そうなんだ…」
じゃあ、ダーシも、まだ帰ってきてないんだ…。
でも、そのほうがいいかもしれない。
「ねえ、シヴィル。ユアク団長って、ローイ司祭長とは、あまり仲良くないんだよね? 」
「ああ、なんか、そうみたいね」
「なんで? 」
「さあ…。まあお互いに権威ある立場だし、魔力もふたりとも持ってるし、なんかライバル? みたいな意識でもあるんじゃないの。それとも、ただ気が合わないだけとか」
「そっか…」
「なんで? 何かあった? 」
「ううん。何でもない。ただ、そんな気がしたから」
「そうだよね。あのふたりは見るからに、仲悪そうだもんね」
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