怪しげな気配

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怪しげな気配

 翌朝早くに、ダーシは外に気配を感じて目を覚ました。 (何か、いる…? )  上着をはおり剣を携え、窓の外の様子をうかがった。窓からの角度と木の枝に邪魔されてよく見えないが、生き物の気配がする。  不意に、ファサッと大きな影が飛び立った。 (あれは…魔鳥…? )  はっきりとは見えなかったが、大きさなどの感じから、魔鳥に違いないと感じた。 (もう明るいし、森へ帰ったのだろう。心配はないか…) と思ったら、魔鳥の気配がしたほうから、セリカが籠を抱えてやってくるのが見えた。 (あいつ…、なぜ、あっちから? ) 「ダーシ、なにかいたか? 」  気配を感じたのか、ラエンも起きていた。 「ああ…、実は今…」 「あら、おはよう。ふたりとも起きてたの? 」  玄関ドアからセリカが入ってきた。持っている籠には、果物の実が入っている。 「ほら、いい果物が採れたわよ。朝ごはんに食べようよ」 「あ、ああ…」 「そうだな…」 「何? ふたりとも、どうかした? 」  ふたりとも様子がおかしい。ダーシがたずねた。 「どこに行ってた? 」 「どこ、って、裏の畑と林のほうだけど? 果物がなる木もあるし」 「こんな朝早くに? 」 「朝早くって言っても、外に出たのは6時くらいよ。暖かくなってくると、天気がいい日は昼間、畑仕事をするのが暑くてつらい日もあるから、なるべく朝にも畑を見るようにしてるの」  ラエンとダーシは顔を見合わせた。 「そういうものなのか」 「そうよ。真夏なんて日が高くなってからは、外なんて出てられないよ。朝早くに畑仕事をして、暑い昼間にそのぶん寝るのよ。お隣さんのおじいちゃんなんて、朝の3時半には畑にいるわよ」 「それって…、朝? 」 「まだ夜なんじゃないか? 」  ぷっと3人は弾かれたように笑った。  布団を片づけソファを直すと、みんなで朝食の準備をした。昨夜のナクリとポトフの残り、そして新鮮な果物。 「昨夜も思ったけど、このナクリ美味しいな」 「ああ、食べたらなんとなく、元気になった気がするし。回復魔法でもかけてくれたのか? 」  セリカは笑いながら答えた。 「魔法なんてかけてないよ。ナクリにはねショーガっていうスパイスを入れて炊いたのよ。風味も良くなるし、体を温める効果があって、元気になるのよ」 「そうか…、スパイス…」 「そのスパイス、どんなのだ? 見せてくれ」  ダーシが食いついた。 「あとでね。分けてあげてもいいよ」 「騎士団のみんなにも、食べさせたい」 「どうぞどうぞ。それに、誰かのために作った料理って、魔法がかかってるようなものだから。小さいころにお母さんが作ってくれた料理って、美味しかったでしょう」 「あ、ああ…」 「そうだったかも」 「みんなが、誰かのためにっていう想いの魔法を持ってるんだよね…」  セリカはぽつりと、囁くようにつぶやいた。
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