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不穏な動き
「はあ? セリカに会えないって、どういうこと!? 」
セリカの部屋の前で、シヴィルが叫んだ。
「ですから、シュキ様あるいは司祭長の許可がないと、聖女様にお会いさせるわけにはいかないのです」
「今までセリカは、第3騎士団が守ってきたのよ」
「聖女様のことに関しては、司祭長の許可も必要だったはずです」
「…それは、まあ。そりゃ、そうだけど。でも、なんで急に? 」
「そのあたりのことは、私どもは聞いておりません」
「じゃあそのシュキって奴に会わせてよ」
「シュキ様も、聖女様同様、司祭長の許可が必要です」
「あー、もー! 一体どうなってんのよ! 」
シヴィルはしびれを切らして、ひとまずセリカの部屋から離れた。
突然、シュキという下っ端の司祭が、セリカの側につくようになり、第3騎士団やそのほかの者たちは、セリカに会うことも許されないようになった。
セリカ自身も、ひとりで自由に動けないらしく、厨房を尋ねることもなくなった。
「何がどうなってんのよ」
ユアク団長たちはまだ帰ってきていない。
ひとまず、なんとかしてセリカと連絡をとらなくちゃ、とシヴィルは思った。
しかし、そう簡単にはいかなかった。
セリカの周りには、シュキをはじめ、常に複数の護衛がついているし、ベランダの窓からこっそり部屋に入ろうとしても、結界が張って合って近寄れない。王宮内で、力づくで護衛たちをなぎ倒すわけにもいかないし…。
早くユアク団長たちが帰ってきてくれないか…、とシヴィルは思った。
その頃、ダーシは、ユアク団長とラエンと3人で、隣国にいた。
その前にダーシが、王宮を離れて調査をしているユアク団長から呼び出されたのは、厨房で久しぶりにセリカに会った直後だった。
ユアク団長が、騎士団のことは副団長に任せて、ラエンとセリカがいなくなった時のことを調べているのは知っていた。
「お前は、セリカ殿のことになると、周りが見えなくなる」
団長からそう言われて自分は外されていたのに、呼び出されたということは何か進展があったのだろうか…。
団長とラエンは、セリカの家にほど近い国境近くの小さな町にある宿屋を借りていた。
「やあ、ダーシ。早かったな」
ふたりがいる部屋に入ると、ユアク団長がダーシに椅子を勧めた。
「セリカのことで、何か進展が…? 」
「さすが、ダーシ。その通りだ。ラエン、説明してやれ」
ラエンがこくりと頷き、ダーシに話を始めた。
「団長が、セリカの家の周りを隈なく調べたら、魔法の痕跡が見つかった。そしてその魔法がどこから繋がってきたかを調べたら…」
「隣国へと続いていた」
ユアク団長が口をはさんだ。
「…団長。私に説明しろって言いましたよね」
「いや、やっぱり私も話したくて、ウズウズしてしまって、つい。悪いな」
ラエンが不満そうに言うと、団長は軽いノリで答えた。
「そして、ダーシ、その魔法が繋がっていたのは、隣国の、しかも王宮のようだ」
「王宮? なぜ、そんなところに、セリカが? 」
「それを探りに、これから隣国へ向かう。ダーシも、あまり突っ走らないようにな。セリカ殿の事情を知るのは、我々だけなのだから」
「…はい」
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