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エピローグ
あれからセリカは、数日間ずっと眠りつづけていた。
ようやく目を覚ました時には、今までの力を失っていた。
そのあと、体が回復してくると王宮を出て、ルヴァとシヴィルの実家に、居候させてもらうことになった。
セリカは村で過ごすうちに、どんどん元気になってきた。夕方にはよく、家のポーチのベンチに座って外を眺めている。側にはいつもロンがいて、膝の上や足元でうずくまって眠っている。
「セリカー! 本、読んでー」
「うん、いいよ」
セリカのところへ、村の子どもたちが、絵本を読んでもらおうとやってきた。その気配を察して、ロンは子どもたちにいじくられないように、さっさとどこかへ姿を消した。
「あんたたち、あんまりセリカに無理させないようにね。セリカも、つらかったら断りなよ」
お世話になってるルヴァとシヴィルの母親が言ってくれる。
「大丈夫です。最近、元気になってきて、家のこともできそうですよ」
「そう? なら、いいんだけどね」
無理してまた具合が悪くなったら、かえって迷惑になる。
今の自分にできるだけ、できることを精一杯。それを自分で決めていい。
「次、この絵本、読んで」
「いいよ。順番ね」
村の、仕事で忙しい親たちも、セリカが子どもたちを見てくれてることで助かっている。
「はい、おしまい。じゃあ次は、これね」
小さな子は、気に入ったら同じ絵本を何度でも何度でも読みたがる。
絵本を読んでいる途中、ふと風を感じた。
(来た…)
「みんな、今日はこの絵本でおしまいにしてね。お客様が来たみたいだから」
「お客? 」
「あー、わかった! 」
子どもたちの中には、駆け出していく子もいた。
その子たちの行く先から、馬に乗った人がやってくる。
「ダーシ! 」
口々に名前を呼びながら近づいてくる子どもたちを見て、ダーシは馬から降りて、代わりに子どもを順番に馬に乗せてあげた。
セリカはゆっくりと立ち上がり、ダーシのほうへ歩いて行った。
「よお、セリカ」
「お疲れ様」
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