騎士団と聖女さま

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 セリカはソファに座り、ユアク団長にもらったチョコレートの箱を眺めては、ふーっとため息をついたりしていた。 「はあぁ~。団長さんの目、きれいだったなぁ~」 「なんだよ。前はラエンがいいとか言ってたくせに、団長にチョコもらったりしただけで、ほわ~っとなりやがって」 「え? ダーシ、何か言った? 」 「何でもねえよ。まあユアク団長は血筋もいいしな。騎士団内でも人気がある」 「騎士団内って…、男同士で…? 」 「違―う! 騎士団には女の騎士団もあるんだよ! 女のほうが都合がいい任務とかもあるしな。まあ団長は、そういう意味じゃなく、男女に関わらず人望がある」 「なんだ、そうなの。血筋がいいって、どういうこと? 」 「団長は、王族と魔術士の家系のハーフなんだよ。あの透き通るような青い瞳は王族の、銀の髪は魔術士によくある特徴だ」 「へえ~、そうなんだ。話も通じるし、懐も広そうだよね」 「お前も…、ああいう団長みたいなのが好みなのか? 」 「へ? え? な、なによ、いきなり…」 「いや、その…。そういえばお前、前の世界で、その、決まった人とかいなかったのか? 」 「…いなかった…」  セリカはぽつりと呟いた。 「将来働いていくために、高校は商業科で必死に勉強して、資格もできるだけ取った…。就職してからは仕事が忙しくて、それどころじゃなかった…。そもそも、出会いとかなかったし…」 「あー、すまない。なんか悪いこと聞いちゃったな。忘れてくれ。ほら、団長がくれたチョコ食べようぜ」 「あ、私のだからね! 私がもらったんだから」 「1個くらいいいじゃねえか。ケチ」 「けっこう甘いの、好きなんだ」 「ああ好きだよ。好きで悪かったな」 「別に、悪いことないけど」 「それよりお前、どうすんだ? 王宮へ戻るのか? 」 「ああ、う~ん。どうしようかな。実際、傷ついてつらい想いをしてる人が、沢山いるんだよね。私が行くことで、助かる人たちも…」 「まあな。でもお前の話を聞いたら、俺たちのこの状況も、自業自得って感じもするし。お前はもともと、この世界とは関係ないしな。ただ…」 「ただ? 」 「ただ、王宮へ行けば、おいしい食事が毎日、自動的に出てくるし、洗濯もしてくれる。豪華な風呂に入って、風呂掃除もしなくていい。ふかふかのいつでも清潔な布団で寝ることができる」 「わぁ…、まるで天国…」 「まあ、やることはあるけどな。だから俺は、無理しなくていいと思う」 「へー、私を連れ戻しに来た騎士さまが、そんなこと言ってもいいの? 」 「だって…、お前自身もいろいろ大変だったんだろ。人のこと癒してる場合じゃないよな」 「まあ、ね…。それに私がここからいなくなると…」 「ん? 」 「いや、なんでもないよ」
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