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プロローグ
「本当に愛しているのは、理莉だけだ」
広々としたダブルベッドの中で、宏司はそのがっしりした右腕で理莉の肩を抱きながら耳元でそう囁く。
「本当に?」
理莉は疑念の声をあげた。
「本当さ」
「じゃあどうして奥さんと別れてくれないの?別れるって言ってから、もう2年以上も経つじゃない」
「こういうのには時期ってもんがあるんだ。今はその時期じゃないってことだよ」
「でもさぁ……私、随分待ってるんだよ?時期って、いつ来るの?」
ホテルの部屋にほんのりと暖かい色の明かりが灯っている中、理莉はそう問いかけた。
「本当に愛しているのは、理莉だけだ」
「今はその時期じゃない」
幾度となく宏司と逢瀬を重ねる中でこのフレーズを何度聞いただろう?気まずそうな面持ちを浮かべる宏司の顔を眺める理莉の頭の中にそんな疑問がふと浮かんだ。
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