発覚

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発覚

 お盆休みが明けた頃だった。理莉がお手洗いの個室に篭っていたとき、女子社員達の話し声が聞こえてきた。 「ねぇ、見た?鷹宮係長の奥さんのFacenote(フェイスノート)の写真」 「えっ?」  思わず声が口から漏れそうなところで理莉はなんとか声を呑み込んだ。鷹宮とは宏司の苗字。宏司が結婚していたなんて、そんなことがある訳がない。何かの間違いだ。漏れ聞こえてくるその声を理莉が噛み砕くことができないまま、個室の外の会話は続いていく。 「夏休みに沖縄に行ってきたらしいわよ。真司君って言ったっけ?2歳の息子さんを連れて。お子さんの目もと、どことなく鷹宮係長にそっくりよ」 「へぇ、幸せそう。家族旅行かぁ……私も早くイケメンでお金持ちの男見つけて結婚したいなぁ」 「そうかなぁ……結婚なんて面倒なだけだと思うけど……」  会話が遠くなっていき、ドアの開く音が聞こえてくる。 ーー宏司が結婚してる?息子がいる?Facenoteに写真が載ってる?  理莉は思わずスマートフォンを取り出した。  鷹宮という苗字を名乗っている人はそこまで多くはない。目当てのアカウントを見つけるまで大して時間はかからなかった。アカウントに表示された名前は鷹宮真樹。画面をスクロールして一番最初に出てきた写真が目に入ったその瞬間、理莉は思わず目を瞑った。スマートフォンに映し出されたのはシーサー像の前でピースサインをした男の子の写真に、燃えるような赤色の花を咲かせたハイビスカスの写真。極めつけにはオーシャンブルーという横文字がぴったりに合うほどの澄んだ海をバックに家族3人並んで撮られた記念写真が目に飛び込んできた。  そこに映っている「お父さん」は勿論、宏司だった。
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