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「ええと……それはつまり……」
「おめでとうございます、お父さん」
医者は、もう一度同じ言葉を放った。単純な言葉のはずなのに、俺の頭はなかなか追い付かず、状況を理解するまでにかなりの時間を要してしまった。
「ほんと、ごめんね……」
そのとき、診察室の簡易ベットで横たわっていた明日香が、ゆっくり口を開いた。
「具合が悪い状態が続いてて……あなたに変な病気うつっちゃったら悲しいし、迷惑でしょ? それで、しばらく実家帰って、様子見してたの……」
彼女は、とても申し訳なさそうだった。返答に困っていると、黙っていた医者が、すかさず明日香に問いかけた。
「実家のご両親、いま温泉旅行に出掛けられているそうですね? 体調が優れないこと、親御さんにしっかり伝えてましたか?」
「それは、その……」
「迷惑だなんて考え、捨てましょう」
謝る明日香をよそに、医者は淡々と話し始めた。
「妊娠に体が慣れるまでは、結構な時間がかかります。全然平気な方もいらっしゃいますが、体調を大きく崩される方も少なくないです。だからしんどいときは周りに頼って、どうしてもしんどいときは迷わず受診して下さい」
それを聞いて、明日香は小さく頷いていた。
「あと、お父さん」
すると、今度は俺の方に鋭い視線が向いた。
「これからですよ?」
そう言われて、反射的に背筋が伸びた。
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