秘密のカロリーヌ

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 問題は、段々と私自身この議論が馬鹿らしくなってきたことである。推理といっても、ほぼほぼ憶測でしか話が回ってない。先生がスマホで見ているのも果たして本当に好きな人の写真なのかどうかも怪しい。そして、いくら教師が忙しいからといって、学校の外に出逢いがないとも言い切れないはずだ。 「あ、来た」  正直いって、話のやめ時を見失いつつある。別の話題に切り替えようとしたその時、マリが声を上げた。どうやら、町田先生ファンクラブとやらに所属している友人からLINE返信が来たらしい。  果たして、その中身とは。 「えっと、町田先生つぶさに観察していてぼやきを聞き取った会員ナンバー3によると」 「うん」 「町田先生の好みは、長身で優しくて」 「お、浅倉先生っぽい?」 「眼が青色で、泣きボクロがあって」 「ん?」 「サッカーが上手くて、脚が速くて、それでいて華奢で」 「んん?」 「歌が上手くて、頭が良くて、経済力があって、それで」 「んんん?」 「……小学生の男子、だそうです」 「待って???」  なんだろう。知ってはいけないことを知ってしまったような気がする。該当の男子が誰なのかさっぱりわからないが、まさかこれだけはないだろうと思っていた“町田先生ショタコン疑惑”の超重要情報を拾ってしまうとは。  私、ルミカ、マリは揃って顔を見合わせた。心はぴったり一つである。 「……寝よう。そうしよう」 「……ソウデスネ」  私達は何も見てない聞いてない。そういうことにしておこう。担任がショタコンかもしれないなんて、そんなことあるわけない、ああそういうことにしておこう!  なお後日。  彼女がスマホでうっとり眺めていたのが、とある少年サッカーのアニメの推しキャラクターであったことを知ってずっこけるのはここだけの話。そのアニメに出逢って以来、現実の男への興味がすっからかんになくなってしまったという。 ――ちょっと先生!私達の貴重な初めての林間学校の夜を返してー!!  あの推理は一体なんだったのやら。  私はやや八つ当たり気味に、そんなことを思ったのだった。
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