秘密のカロリーヌ

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 四組の班が一つ、五組の班が一つ帰ってくるのが遅れたのだった。理由は、最初に先生が危惧したように列が長くなりすぎたこと。最後尾に足が遅すぎる上体力がなさすぎる年輩の先生を配置してしまったのも敗因だったことだろう。彼は正しいルートはわかっていたが、上るのが遅すぎて間の班が二つもいなくなったことに気づいていなかったのだから。  先生ほどではなくても体力がない生徒がいて、置いて行かれた班のメンバーがはぐれた形だった。途中の二手に分かれている道を別方向に行ってしまったということらしい。幸い彼等はすぐに見つかったが、子供達がいないことに気づいた先生達は生きた心地がしなかったことだろう。 「しかし、かなぼ宿ってさあ。姉ちゃんも同じ小学校の出身だから話聞いてたけど」  私はジト目になって言う。 「私は知った。大好きなカレーであってもまずい時はまずいのだと」 「それな」 「それな」 「私、カレーライスだけは誰が作っても美味しく作れると信じてた。ていうか、これからも信じてたかったんだよ。……あれ確実に、玉葱が炒まってなかったと思う。あと、ニンジンがやばいくらい硬かった件」 「まりあちゃん、あんまり深く考えない方がいいよ。ちなみに明日のメニューはハンバーグらしいけど」 「姉ちゃん言ってた。そっちも覚悟しろって」 「マジかあ……」 「マジです。ごめんね、夢も希望も奪って」 「いや、いいよ。今日の晩御飯の時点でいろいろ察したから」 「はは……」  話す内容は実にくだらないもの。しかし、ご飯がマズかった、なんて話であってもこの状況だと妙に楽しかったりするのである。山登りのみならず、朝のバスの中でクラスの男子の一人がジャイアンリサイタルを披露して大変なことになった話だとか。風呂に入ったら洗い場がなかなか開かなくて大変だったとか。男子の一人がうっかりと見せかけて女子風呂に突撃しようとして粛清された話だとか――それはもう、いろいろと。  話せども話せども話題は尽きない。やがて、こういう場所での定番に内容はシフトしていくのである。そう、林間学校の夜にやるものといったら決まっている。怪談か、もしくはコイバナだ。特に私は、どうしても気になっていることがあったから尚更である。 「ルミカもマリもさ、知ってるかもしれないんだけど」
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