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数日をかけて私は色んな話を聞き、頭の中で記事をまとめていった。
その間ミレイアが休んでいるのを見たことがないが、ホルヘは働いているところを見たことがない。
気がついたら眠っているか食べているかだ。
私はそっとミレイアに聞いてみた。
「不公平だなーって思うことはない?」
これでも控えめな表現で、私だったら文句を言う。
「もしかして、私がいるから仕事ができないとかじゃないよね」
ミレイアは一瞬きょとんとして、笑い出した。
「そんなんじゃないよ。星石採りは七日に一度なんだ。他の村人と交代でね。次は明日だよ」
ミレイアはいきなり核心に触れた。
「……私に教えてもいいの?」
「いいのいいの」
「私が取材したことを公表したらこの村は……」
「星石はあっという間に消えちゃうだろうね。これは他の村人やホルヘとも話し合ってることだから教えても構わない。この村で生まれた人でないと、ここの星石は採れない。理由はね……」
「そっからは俺が引き継ごう」
ホルヘがいつの間にか起き出していた。
「明日一緒に来な。ただし、ちょっとでも遅れるようなら置いていく」
「ホルヘ!それは危険すぎるよ!」
ミレイアがきつい口調で咎めた。
「それくらいしないと納得しないだろうさ。明日、日の出と同時に出発する」
翌日、私たちは崖の一番上にいた。
ホルヘは置いていくと言いながらしばしば足の止まる私を待ってくれさえしたが、全てにおいて大雑把だった。
ミレイアがついてきてくれなかったらどうなっていたことか。
苦労してやっとたどり着いたところにあったのは、何とも異様なものだった。
「これ……は?」
「そっちは土虫、あれは大蠍、向こうのは氷鳥だな。さすがにこうなっちゃ食えないけどな」
ホルヘはすまして答えた。
「土虫……食べるんだ!」
「美味いよ。内臓を引っ張り出すのが嫌でなきゃな」
そもそも触りたくない。
たくさんの虫や動物たちが、形を残したまま白っぽく光る石になっていた。
細かく砕けた一部に、かすかに虹の色が見てとれる。
「星石は……虫や動物の死骸なの?」
私たちは、星石は空から降ってくる贈り物だと聞いて育った。
「ここは墓場だな。普通なら数えきれないほどの年数がかかるけど、ここの魔力は特別に濃いから数十年でこうなる。その魔力に触れれば痛みを忘れて眠るように逝けるらしいから、動物たちは傷ついていてもここまで上がって来るんだろう。さあ、行くぞ。すぐにどうなるって話じゃないが、長居はしない方がいい」
「どこへ?」
「坑道。ここからが本番だぞ。空気が極端に薄い。我慢できなくなったら手をあげて」
「……」
もう既に息苦しいから、少しだけあげてみた。
ホルヘはにんまりと笑って何かを取り出した。
「この木の実を口に含むといい、呼吸を助けてくれる。ここらでしか採れなくて高価だから絶対吐き出すなよ」
木の実は苦くて酸っぱくてえぐくて、これまで食べた物の中で一番まずかった。
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