act.2 魂の回帰

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 翌朝、結構夜更ししたのにそれでもいつもの時間には目が覚める。  一緒に寝ていた筈の美音も、もう朝食の支度に降りているようだ。俺はジャージに着替えて下に降りた。 「お早う拓海、昂兄達はさっきロードワークに行ったわよ。もうすぐお父ちゃんは帰ってくるわ」  アレックスと一応ウォルフもか。アスリートの朝も早いな。俺は顔を洗ってサンルームから庭に出た。  じいちゃんと真也が丹精している冬野菜の畑を抜け、日当たりの良いところに堂々と立っているあかつき桃の木をしみじみと眺める。  まだ一度も結実してない若木だ。桃栗三年柿八年、昔の人はちゃんと分かってる。  でも大分太い良い幹になって来た。来年は期待できるかな、楽しみだ。 「拓海お早う」 「じいちゃん、お早う」  じいちゃんは温室の薔薇を世話してたようだ。 「じいちゃん、水やりは?」 「ああ、こっちの畝がまだだ」 「分かった」  ホースリールを引いてくる。水を撒き始めたら真也もやって来た。 「兄ちゃんお早う、水撒きありがとう!」 「お早う真也」  三人で水を撒いたり雑草を引いたり。以前通りの風景がそこにある。結構俺がしょっちゅう帰ってくるから懐かしくはないけど。  作業があらかた終わった頃に父ちゃんがロードワークから帰ってきたのが見えた。これからシャワーを浴びて朝食を食べてから仕事に出勤が父ちゃんのルーティンだ。  今日は土曜日だし明日は父ちゃんも休み、今日の宴会はきっと賑やかだろう。 「あ、おーい拓海!拓海おはよう!」  え?この声は隆成おじさん?フェンスの向こうから手を振ってる。 「おじさん、お早うございます。お久しぶりです」  水撒きを終えてリールの片付けを真也に任せる。俺はフェンスに近づいた、日中で庭に人が居るから電撃のセンサーはオフだ。 「そうか、もう帰ってたんだ。成人式だもんな」 「はい」 「うちもさ、ささやかだけど龍矢と悠里のお祝いをやるつもりなんだ。内輪だけどな」  そうか、それは良かった。  真波酒造は北兄妹を本当に大事にしてくれている。俺達が高校の時の縁がずっといい感じに繋がっているのだ、北もすっかり落ち着いているらしい。  そういや悠里も進学したんだよな、看護学校だったっけ?働きながら行ける学校だとか。それでもちゃんとあの社宅で兄妹仲良く暮らしている。 「悠里に振り袖を着せてやるんだ、うちのおふくろが張り切って準備してるよ。所で拓海」  あ、なんか見慣れたパターン。 「ちょっとで良いから醸造所を手伝ってくれ〜!年内出荷が大変で〜!!」  相変わらずだわ真波酒造、年末年始の人手不足はなかなか解消しないな。 「分かりました、今日は用事あるんで明日から必ず手伝いに行きますから」  まぁ、それもいつも通りでなんか安心するな。変わらないものにホッとする。  明日からならなんとかなるだろう。美音は成人式の衣装合わせとかで莉緒菜おばさんの所に行ったりするけど、俺は別に。  今日はちょっとアレックスに付き合ってもらって、正装用の服を買いに行く。やはりちゃんと自分の物で正装したいと思う、向こうのじいちゃんに見せる写真だから余計に気合を入れたい。  ばあちゃんに聞けばそういう品物がある店も分かると思う。 「それじゃ頼んだぞ拓海!あ、昂輝とかウォルフもいるんだよな?暇そうにしてたら連れて来いよ〜」 「はい、了解しました」  隆成おじさんが自分ちに入って行った。  おじさんって真波酒造の商品開発部の責任者の筈だけど、相変わらず色々忙しいようだな。真波(うち)は今どき家内制手工業だってよく言っていた。  今更だけど俺や昂輝はともかく、外国人のウォルフがバイトしても大丈夫なのかと疑問だが。親戚のおっちゃんちをお手伝いして、小遣いをやってる感覚で済ましてるらしい。  まぁ専門家の父ちゃんが何も言わないから別に問題はないんだろう。  さて、朝飯だ。真也とじいちゃんが作ってくれたキャベツの味噌汁が楽しみだ。    
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