act.2 魂の回帰

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 朝食を終えたあと、俺は母屋の台所にいたばあちゃんにアレックスのじいちゃんの話をした。ナバホの正装としてカウボーイの服装をちゃんと揃えたいと。 「ちょっとだけお待ちなさい」  知り合いに連絡してくれると言う。この辺では無理かも知れないが、東京に専門店があるはずと。 「どうせならちゃんとした物を揃えてあげたいからね」  相変わらずばあちゃんも妥協の無い人だ。俺がやらなければならない事だとすぐに理解してくれた。 「櫂にもちゃんと言っておきなさい。息子の成人の正装を揃えるのは親の役目よ」  元々俺の成人式には、昂輝の時にじいちゃんが俺達兄弟にと作ってくれた紋付袴が用意されている。だからのんきに構えていた訳だが。 「うん、メールしておく」  もう事務所に出勤してるからな。とりあえず俺たちは出掛ける準備だけをする、その事をアレックスに伝えた。 「分かった」  アレックスも三階に昇っていく。  部屋で父ちゃんに事情を説明するメールを軽く送る。あとは着替えて持っていくのは財布とスマホ位で良いや、身軽にしておこう。 「拓海、おばあちゃんが呼んでるわよ」  美音が部屋に来た。 「東京にいいお店があるみたい、気を付けて行ってね」 「うん、美音も莉緒菜おばさん達によろしく」 「はい」  夜の宴会準備もあるもんな、美音も大変だ。タイミング的にクリスマスか忘年会か。 「そうね今から深雪ちゃんも、学校が終わったら悠里ちゃんも手伝いに来てくれるの」  相変わらずの三人娘か、仲良くやってるみたいで良かった。 「お父さんの指輪をしてるのね」 「ああ」  これからずっと肌見離さずにいようと思う。  二人で階下に降りる。ばあちゃんが待っていた。 「拓海、これがお店のメモよ。おばあちゃんが行きつけのショップの店長さんに聞いたの。ここならアメリカン・カジュアルの物が全部揃うはずだって。洋服も小物も全部あるらしいわ」 「ありがとうばあちゃん」  手にしていたメモをもらう。こういう情報が全く心当たりが無かったから助かる、ネットからの情報だけでは心もとない。 「拓海」  母ちゃんも来た。 「お父ちゃんから電話が来たわ、これを持って行きなさい」  封筒? 「お金が入ってるからね、これで色々揃えて来て。ちゃんと電車で行きなさい、アレックスの分も入っているから」 「そうね、年末だから高速バスは道が混みそうね」  ばあちゃんが言う。そうか、今日はクリスマス本番か。俺は安く済むバスを使おうと思っていた。 「はい、こっちはおじいちゃんとおばあちゃんから。これも準備に使うのよ。あとね、アレクと何か美味しい物を食べてきなさい」  ばあちゃんにも封筒を渡された。両方で結構な金額だろこれ、でも断れないよな。 「うん、分かった。ありがとう」  ここは素直に受け取っておく。 「拓海、何時の電車で行く?おじいちゃんが駅まで送るよ」  じいちゃんがスマホの時刻表を見ていた。 「タクミ」  いつの間にかアレックスも側にいた、準備が出来たんだな。 「やっぱり良いな、お前の家族は」 「うん」  いつだってこんなに愛してくれている。 「エルスもきっと喜んでいる」  それはきっと間違いない。
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