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一応、男子の正装にもシルバージュエリーが要るようだが、それはアレックスに頼んだ。
俺はアクセサリーは父さんの指輪と美音が作ってくれた虫よけシルバーリング位しか持っていない。元々アクセサリーには興味が無かった。
「任せろ、俺が持って来てる物がある」
昨日はうちの女子に結構あげてたけど。
「あれは女性用に作った土産だ。拓海には元々正装させようと用意してきた別の物がある。拓海が風呂に行ってる間に揃えておく」
よろしくです。
とかなんとか、風呂でのんびりして出てきたら、自分の部屋では美音の準備も始まっていた。
見慣れないなめらかな生地のシャツとスカート。あれ、これって。
「あ、拓海見て!おばあちゃんと莉緒菜おばさんがベルベットのお洋服を揃えてくれたの。スカートはおばあちゃんのでブラウスは莉緒菜おばさんのよ。サッシュベルトはおばさんが羊に似た毛織物を見つけて来てくれたわ」
そうだったんだ、美音はやっぱりその服を探していたんだな。嬉しそうなその笑顔が俺も嬉しい。
もうそんな時間だったか。父ちゃんちにはもう何人か集まっているのかな。
そこにカナ姉もやって来た。
「美音、先に髪のセットとお化粧しましょうね。下で莉緒菜おばさんが待ってるわ」
「え?お化粧はお姉ちゃんじゃないの?おばさんが?」
「この家の娘のドレスアップは着物だろうが洋服だろうが絶対誰にも譲らないって。なんでもっと早く言わないのってお父ちゃんが怒られていたわよ」
「あらら」
いつの間にやら本格的に。
そういやおばさんはプロの美容師だ、若い頃は東京でメイクアップアーティストの勉強をしてたこともあると聞いている。可愛がっている美音の晴れ姿は、例え着物じゃなくても自分がやるってか。
「色々急だったもんね、でもおばさんが来てくれて良かったわ」
「カナ姉、もう誰か来てる?」
「醸造所組以外はみんな来てるわよ、あそこは遅いから先に乾杯しちゃうって」
なるほど、相変わらず醸造所は切羽詰まってるなぁ。隆成おじさんと北と仁科、昂輝とウォルフは遅刻確定ね。
でも莉緒菜おばさんとファムおじさんが来てくれて良かった。父ちゃんは普通の忘年会のつもりで呼んだんだろうけど、美音を本格的に可愛くしてくれる。まぁ、これもある意味結果オーライ。
「じゃあ衣装も持っていくわ。シルバージュエリーは昨日アレクにもらったのを持って、と」
「あ、美音、これもだ」
俺が買ってきたモカシンブーツ。
「え?可愛い!これも買ったの?良かった急だからモカシンの靴は準備出来なかったの」
それじゃ余計に良かった。これなら普段使いにも出来そうだし。
「美音、早く!」
カナ姉と美音が階下に降りて行った。
「タクミ、いいか?」
入れ替わりのようにアレックスが三階から降りて来た。
「バングルはこれだ、ペンダントはこのターコイズのスクオッシュブラッサム。このナジャのデザインはナバホ伝統の形でイヤーカフもある。指輪は叔父さんのがあれば十分だ」
もっとジャラジャラかと思ったが、このぐらいならいい。この嵌ってる綺麗な水色の石がターコイズか。
「綺麗だな」
手にとって眺める。本当にきれいなブルーだ。
「俺がタクミの為にずっと集めていた石だ。これはスリーピングビューティとキングマン産だ、日本に行く事になって初めて使えた」
その鉱山の石はとても美しいと美音から聞いた事がある。全部アレックスの手作りだ、嫌でも気合が入る。
これをしっかり身に着けたところをナバホのじいちゃんにも見てもらおう。
「着替えるか」
俺は立ち上がってハンガーに掛けたシャツを手に取った。
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