act.3 ギフト

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   衣服は余り派手じゃないものを選んできたつもりだ。青を基調にナバホ文様の刺繍が入ったカウボーイシャツや、結構大きめのベルト・バックル。これも銀だ、しかも偶然にもマークさんの店で見つけたレオ伯父さんの作品。  下は革製では無く結局ジーンズにした。その方が着慣れているせいか違和感がない。  しかしシャツもジーンズも絶対にしっかり糊付けしてアイロンを掛けたものが正式という。マークさんの店の物もしっかりそうなっている。  服を着た後は、アレックスがジュエリーをひとつづつ着けてくれる。  バングル、イヤーカフ、そしてスクオッシュブラッサムのナジャペンダント。  バングルにもサンバーストの文様。中心には綺麗な大粒のターコイズ。  アレックスの手造りというそのシルバージュエリーはその全てが洗練されたデザインで、俺のために創られたというそれは、その全てが本当にしっくり来る。絶対俺に似合っているはずだ。 「どうだ?苦しい所はないか?」 「うん、ぴったりだ」  美音の手鏡を覗く。初めて見る日本人じゃない俺がそこにいた。 「やっぱりエルス叔父さんにそっくりだな」  イヤーカフを整えながらアレックスが言う。それには小さな鳥のモチーフが付いていた。 「イーグルフェザーだ、ナバホには大事な物だよ」  ああ、知ってる。  父なる空のメッセンジャー(イーグル)  ネイティブアメリカンの多くの部族でイーグルは天空からのメッセージをもたらす。 「父なる空からの大事なメッセージだ。父さんがそこにいるんだな」  アレックスが頷いてくれた。 「髪はどうするかな」 「そのままでいいよ。テンガロンハットもあるし」  その方がエルス父さんに似ている。写真を見たらナバホのじいちゃんが喜ぶだろう。 「あら素敵ね拓海、見違えたわ」  いきなり部屋の入口に莉緒菜おばさんが立っていた。手になにか箱の様な物を持って相変わらずの女優立ち。 「莉緒菜おばさん、お久しぶりです」  振り返ってご挨拶だ、美魔女ぶりはご顕在のその美貌。 「元気そうね拓海、こちらがアレクサンドロくん?」  持っていた箱を机の上に置くおばさん。 「はい、俺の従兄弟です。おばさん、美音は?」  メイク中じゃなかったのかな。 「安心しなさい、とても可愛くメイクとセットは終わっているわよ。今はカナがお洋服を着せているわ、後は仕上げ。その前に拓海の方をちょっとね」  俺? 「あの、不躾で申し訳ございません。天武流のリオナ師匠とお見受けしますが」 「ええ、そうよ」  アレックスが深々と頭を下げる。 「NY天武流合気道術道場門下のアレクサンドロ・モルダー四段です。コーキ先輩からお話はお聞きしておりました」 「まぁ四段、初めて5年位だと聞いたけど優秀なのね。あなたもきっと御巫兄者の自慢の門下生ね。よろしくね、私は出雲櫂の親代わりよ、ここの家の娘も息子もみんな私の孫なの」  あ、間違ってないわ。そういう言い方ね。 「急ぎましょう、アレックスこれを拓海に着けてもいいかしら?」 「はい?」  莉緒菜おばさんが持ってきた箱の中から何かを取り出した。茶色の羽根? 「これは…鷲の風切り羽!?貴重な石打も?どうしてこんな物が!?」  ん? 「このお話を美音に聞いて、色々調べてすぐに知り合いの弓道具を扱うお店の人に連絡したの。これは犬鷲の石打と風切羽根よ。和弓の矢に使うのよ」  犬鷲… 「本当は大鷲の物を手に入れてあげたかったけど、ワシントン条約がね〜」  大笑いしてるけどこの犬鷲の羽だって結構な高級品の筈だ、全くうちの大人達は。 「どうせなら日本の物も入れてあげたかったの、拓海はうちの大鷹の息子だもんね」  そうか、父ちゃんの… 「アレックス、頼む」  その羽根を手に取った。本当に立派な石打と風切羽だ。 「この羽は対で譲って貰ったのよ。もう片方は美音の髪を飾るつもりなんだけど、それもいいかしらアレックス」 「もちろんですリオナ師匠、それではこの銀の髪留めで留めましょう」  二人でなにか始まったし。  でも良いな、犬鷲か。なんか犬と縁があるようでちょっと嬉しいかも(笑)なんせ俺は野生の犬少年だったしな。    準備の出来た俺達は階下に降りた。   71b6050b-168c-4797-a601-c11bc8656f63 イーグルフェザー。なんか愛嬌が… 余談 イーグル(鷲)とホーク(鷹)。 ナバホ族に限らず、ネイティブアメリカンの人々は古くから鷲や鷹の羽を戦いの衣装やお守りとして使ってきた。大空を早く舞う大きな鷲と鷹は、天の創生者とのメッセンジャーであると信じられている。
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