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笑いを押し殺してとりあえず階段を昇る。
「アレックス、ここが俺と美音の部屋だ」
「分かった、後で落ち着いたら邪魔しても良いかな?色々話したい」
「ああ、もちろん。いつでも来い」
俺も話したいしな。更に階段を昇って三階だ。
「こっちにトイレとか洗面所もあるから。一応あの部屋だけは駐車場からも直接行けるようになっている」
細い通路の先に客間だ、中にはもうウォルフと昂輝がいた。
「昂輝もここに寝るのか?」
一応聞いてみる、ベッドは一つだけど別に布団がひと組用意してある。昔はエルンストや父ちゃんが仕事部屋にしてたから机とかもあるけど広さは十分。
「俺は父ちゃんち!カナの傍!!」
昂輝はムキになっている。いやいや、カナ姉は凪紗と一緒の二階の寝室だし。
「父ちゃんちで空いてるのはその隣の真也の部屋だけだぞ。あそこは和室だからいくらでも布団が敷ける」
ちなみに三階の寝室は大阪の美夜さん藤原さんご夫婦が使うようにセッティング済だ。もし、田中が一緒に来たら真也の部屋か、美音がアトリエにしてる三階のフロアを使う予定。
「ズルい!拓海は美音と一緒なのに!!」
元々同じ部屋だって。お前はウォルフと同じような反応をするな。
「部屋割りは父ちゃんが決めたんだから文句があるならそっちにどうぞ。あと空いてるのは二階の学習室と三階の美音のアトリエだ」
うっ!と唸って昂輝が黙り込んだ。狭い客間で野郎三人でギュウギュウ過ごすか、可愛い弟とゆったりするか。
まぁ普通に後者だろ。学習室もアトリエもだだっ広いが寝室にするには落ち着かないと思う。
「みんな、おばあちゃんがお風呂に入っちゃいなさいって。母屋の方もお父ちゃんの家の方も両方使えるから」
トレイにお茶セットを持ってきた美音が言う。
「今日はお母ちゃんもおばあちゃんも張り切ってご飯を用意してくれてたからね、みんな楽しみにしててね」
それは俺もすごく楽しみだった。
「アレク、ミネのおうちのごはんはすごく美味しいよ。ここの女性達はみんな素晴らしいシェフだ」
当たり前だウォルフ、たまには良い事を言うな。
「普通の家庭料理だけどな、ホテルだと節約するのにコンビニばっか行ってたからここのメシが超楽しみだった〜」
昂輝が立ち上がって伸びをする。どうやらろくなもんを食べてなかったらしい。
「あ、でもポイントはちゃんと押さえたぞ。大阪ではお好み焼きとかたこ焼きとか。京都では湯豆腐とかをアレクと食った」
結構リーズナブルなポイントだな、まぁ昂輝だから。
「コンビニのチキンとかは割と美味かったぞ、タマゴサンドとかも」
アレックスが言う。まぁ、それも日本文化の一端かな。
「『オニギリ』というライスボールは、道場でイベントがあると出してくれる事があるんだ、それの焼いたサーモンとかツナとか好きだった」
「あら、おにぎりは今日もあるわよ。拓海が好きだから鮭も梅も色々」
俺とアレックスは好きな物が一緒か。
「本当かミネ、楽しみだよ」
俺も楽しみだ。
「俺とウォルフは父ちゃんちの風呂行くわ、デカいからな。アレクは母屋の方を使え」
「ああ、分かった」
昂輝とウォルフが階段を降りて行った。
「アレックス、準備が出来たら声掛けてくれ。俺は下の部屋にいるから」
美音と一緒に部屋を出る。俺は自室に、美音はそのまま台所へと降りて行く。
暫くしてアレックスが俺の部屋に来た。
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