The world he saw in the organization

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The world he saw in the organization

馬車の中。 「ねぇ、これから僕をどうするの?」 男は一瞬固まったが、すぐに答えた。 「お前を立派な殺し屋として育てる。俺の役に立ってもらうためにな。」 男の役に立てば、もしかしたら父さんと母さんに会える日が来るのかもしれない。 今は我慢だ。もうすぐお腹の赤ちゃんの兄になるんだ。かっこいい所を見せなきゃ。 そうだよね…母さん。 しばらく馬車を走らせると、大きな屋敷へ着いた。 辺りは木が茂っていた。屋敷の方は全て真っ黒に塗装されている。バレないようにするためだろうか。 「さぁ、着いたぞ。今日からここがお前の住む場所だ。」 中へ入ると広間があった。 そこら中に煙草の吸殻や、飲み干した酒の瓶、 所々血溜まりがあったりする。 いかにも裏社会という感じだ。 更に奥へ進むと、個室へ着いた。 「ここがお前の部屋だ。好きに使ってくれていいぞ。」 そういうと男は部屋から出ていった。 部屋の中はベッドと机と椅子があった。 あの広間とは違い、十分に生活出来る部屋だった。 「ふぅ…。」 やっと一息ついた。 あとはここで、毎日父さん母さんに会えるように頑張るだけ。 頑張る…だけ…。 「…母さん…父さん…っ」 その夜は泣いて過ごした。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ あの夜から4年後。 僕はすっかり生活に慣れてしまった。 毎日殺しの訓練。 そして時々組織の大人と一緒に仕事に出る時もあった。 そして今日は仕事の日。 今回はベルモンドと2人で別組織の離れの襲撃だった。 「だいぶ慣れてきたみたいだな。クライヴ。」 「えぇ、4年ともなれば流石に慣れますよ。」 自分で殺した死体は自分で始末する。 ベルモンドにそう教えて貰った。 「ハッ、お前も随分と生意気になったもんだな。」 僕はベルモンドを無視して組織へ向かった。 最近、仕事続きで疲れてきたな…。 ちょっとぐらい寄り道してもいいよね。 町の大通りにある本屋さんへ寄った。 随分古くからあるようで、新しい本もあれば昔の本もある。 「いらっしゃい…子供が来るなんて珍しいね。何かお探しかい。」 店の奥にいた店主が声を掛けてきた。 「いえ…見ているだけです。」 「そうか…ゆっくりしてきな。」 店主は無愛想に言った。 本棚を1列ずつ見ていくと、小さい頃によく読んでいた本があった。 「あ…。」 この本はよく母さんが読んでくれたっけ。 【ママはどうしていなくなったの?】 【これは運命。そしてあなたの人生よ】 【運命ならば、私は…】 【あなたは生きるべきよ】 【救われる保証はないでしょう?】 【それでもあなたの義務なのよ】 「あれ…。」 目から涙が零れていた。 ダメだ…。泣いちゃ…。 これは…運命なんだから…。 自分で決めた運命だから。 もうここから出よう…。 ここにいてはいけない。 また思い出してしまう…。 僕は泣いてはいけない。我慢しなければ。 僕は足早に店から出た。 外は雨が降っていた。 しまった…寄り道なんてするんじゃなかった。 大通りを走っていると、遠くの方で誰かが倒れていた。その倒れている近くには馬車と小さな子供と手を繋ぐベルモンド。 なぜ彼がこんな所に…。 だんだんと近づいていくと…。 「父さん…?母さん…?」 馬車が行ったあと、僕は2人の元へ駆け寄った。 雨は先程よりも強く降ってきた。 2人の体は冷たく、首元が切られていてる。 血溜まりが水溜まりと混じって濁る。 母さんの手には血に汚れたペンダントが握られていた。 「ね…ねぇ、僕だよ。クライヴだよ…。ねぇ…」 問い掛けても返事がない。 胸が貫かれたような感覚があった。 ぽっかり穴が空いているような…。 すっからかんだ。 僕は。 あぁ… あははっ… 「死んじゃった…。」 ┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ 組織へ戻ると、ベルモンドと先程の小さな子供がいた。 「クライヴ…お前どこに行ってた。先に帰ったくせに。」 「ごめんなさい。少し寄り道を。」 僕は足早に自室に戻ろうとした。 が、小さな子供に袖をすかさず引っ張られる。 「どうしたの?」 と心配そうに僕の顔を見つめていた。 顔をよく見ると目が左右違っていた。 右目は母親と同じ目。左目は父親と同じ目だった。 「あ…あぁ…。」 ダメだ…泣きそうになる…。 泣いてはいけないのに…。 拒絶しなければ。 コイツの前で泣いてはいけない。 絶対に。 僕は小さな子供の手を振り払って進もうとしたが、 「お兄さんも一人ぼっちになったんだね。」 それがトドメだった。 目から涙が溢れる。 僕は小さな子供を無視して部屋へ戻った。 パタン… と静かに響くドアの閉まる音。 やっと一人になれたという安心と、小さな子供の一言への怒りが込み上げてくる。 涙は止まらない。 僕はベッドへ、その身を伏せた。 「母さん…父さん…?どうして…アイツ…今更…。」
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