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砂漠
ベッドの上で胸を彼に鷲掴みにされる。悪戯に指を激しく動かしているだけで、そこに何の感情も現れてはこない。
もう片方の手の指が私のアソコを撫でるように動くが、単調な動きの繰り返しで、私の身体は反応をすることを忘れ去った。
つまらないという感情だけが、ベッドの上を支配している。
私の心と体が火照る事も無ければ、濡れることはない。
肌の擦れ合う乾いた音だけが虚しく響くだけだ。
倦怠期を迎えたわけではない。私の彼に対する想いは全く変わっていないのだから。
出会った頃の熱い思いが冷めていることはない。
変わったのは彼の方だ。
全ての行為に想いが乗っていないのだ。
行為もただ義務的に行っているだけのような感じがしてならない。
今夜もそうだ。
彼の行為は義務的だ。
いや、オートメーションと言っても過言ではない。
淡白な世界観の中を漂っている、掴みどころのない感情を、必死に探し求めている虚無感のみが、私の心の中に巣くっているのだ。
彼の硬いアレが私のアソコに単調な感じで何度も挿入されてくる。
私の身体の反応も何処か義務的な物になってしまう。
無機質な演技でしかないのだ。
ベッドの軋む音が単調なリズムを刻む中、乾ききった行為に心は存在しない。
草も木もない荒野に吹き荒れる風が舞い上げる砂埃。
細かい塵が舞っているだけの空間に光が差し込み、数え切れない塵が光を反射させて、薄っすらと浮かび上がった時の光景を、ひたすら眺めている時のようなやるせない時間が、悪戯に流れていく。
私にとって、彼と過ごす夜は砂漠になってしまったのだ。
どうして……。
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