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2.
思い起こせば、剛士は美紀の望むことは何でも叶えてくれた。
美紀は、この7年間の彼の言動を思い起こした。
会社帰り、雨だといえば、店舗を閉めてすぐに馳せ参じてくれた。
何かの折に花束をもらったけど、気に入らないからもっと見栄えのよい
花にしてくれと頼むと、すぐに買いなおしてもくれた。
誕生日に豪華なレストランでゴージャスなディナーの席を
設けてくれた時も、料理が気にいらないと目の前の料理を突っぱねたら
怒りもせず、悲しげではあったけれど、料理の注文をやり直してくれた。
友達と旅行に行くのにアッシーを頼んだ日、剛士はインフルに
掛かってるから今回は無理だと言った。
私は旅行があるから、家まで看病しになんて行けないよ?
と言った時も彼は怒らなかった。
「治ったら連絡ちょーだい。
私に会いたいからって早まって連絡しないでよ?
うつるからさ」
「……わかった」
と、剛士からは大人しく納得したふうの返事が返された。
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