最後のメランコリー

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 私はビックリすると、いきなり前園さんが言った台詞にあたふたする。そんな私をお構いなしに前園さんは自分の話を続けた。 「だってデビュー作がヒットして、新人賞まで受賞するって。そんな作家なかなかいませんよ? 限られた人しかいません。先生は才能が無いって言ってますけど、むしろ僕から言わせてみたら才能ありまくりです。ふざけんなって感じです。先生はそんな素晴らしい才能があるのに、それを発揮できていない。宝の持ち腐れなんです」  一気に言ったからか前園さんは少し咳き込むと、私は「大丈夫ですか?」と言って前園さんのお茶を彼に近づける。前園さんはペコリと会釈して、お茶を飲み干した。 「才能って自分次第で得ることも、できるんですよ。先生は今、せっかく得た才能を消そうとしてるんです。それは絶対にあってはなりません。生まれた子供を殺すようなもんです」 「怖い表現しますね」 「それくらい、あってはならないことなんです!!」  一言一言、強調しながら言う。私はその圧力に思わずのけ反ると、「はい……」と抜けた声で言った。 「良いですか、今まで散々先生の作品をバカにしてきた奴らを見返しましょう。僕が全力でサポートします。僕は絶対に先生を見捨てません。だから、二人で最高傑作を世に出しましょう!!」  バンッと机を叩いて前園さんが立ち上がると、周りにいた作家や編集者が皆驚いた顔で前園さんを見た。前園さんはそんな視線をお構いなしに私に向かって手を伸ばすと、握手を求めてくる。
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