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ここまで来ると、自分がどれだけ陰キャとして過ごしてきたのかが分かる。再認識したところで泣きそうだ。
「あの、一つ聞きたいんですけど」
「何ですか?」
前園さんがぐいっと体を前のめりになると、私もつられて前のめりになる。
「工藤先生は、デビュー作と今現在で作風は同じでも読んだ時の感想は別物です。デビュー作の方が断然良かった。デビュー作と今とで心境の変化でも?」
「……いえ、特には」
「先生、嘘下手すぎます」
前園さんはくすっと笑うと、背もたれに体重を預けた。私が口をもごもごさせると、前園さんがその姿を見ながらお茶を飲む。飲んだところで「もしかして」と口にした。
「先生、書くのが嫌になりましたか?」
私が目を見開くと、前園さんが「図星だ」と言った。
「昔はあんなに楽しかったのに、今じゃ全然楽しくない。締切に追われるし、批評で心は病むし。辞めたい、なんて思ってないですよね?」
私の心を読んだかのように合っている。私が俯くと、前園さんが溜息を吐いた。
「先生の作品の変化って、書く楽しさへの薄れからだったんですね。どうりで徐々に面白くなくなっていくわけだ」
「はっきり言わないでください……」
「あ、すみません。でも一ファンとして言わせてもらいますが、先生には才能があります」
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